象徴主義-象徴主義の精神世界と想像力|芸術って何だ!|デッサンと言う礎

デッサンと言う礎-デッサンの基礎技法、描き方

象徴主義-象徴主義の精神世界と想像力

芸術って何だ!【デッサンと言う礎】

19世紀後半、リアリズムにとらわれる写実主義の思想を受け継ぐ印象派の傾向があり、逆に写実主義の考えに反発した象徴主義の傾向が見られた。象徴主義は目に見える世界を追求していた写実主義や印象主義を否定し、また、科学と機械万能、物質主義の実利的な社会に対して、芸術の卑属化を嫌悪した。そして、人間の存在と生きる中での深い苦悩、その精神性を大事にし、人間の運命や精神性、想像力、神秘性を象徴的に表現しようと追及した。主題や表現方法は多様にあり、国際的な潮流になる。

イギリスのラファエル前派は、最初の象徴主義運動の一つにあげられる。1848年に、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(Dante Gabriel Rossetti, 1828年-1882年)、ベアタ・ベアトリクス 1863頃 テート・ギャラリー(ロンドン)蔵-ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ作ジョン・エヴァレット・ミレイ(John Everett Millais, 1829年-1896年)、ホルマン・ハント(William Holman Hunt, 1827年-1910年)らが結成した「ラファエル前派兄弟団」は、ラファエルロ以降の西洋絵画を退廃とみなし、それ以前のイタリアやフランドルの芸術の持つ誠実で精神的なあり方こそ理想的な姿と考えていた。こうした考え方は19世紀初頭のナザレ派やルンゲ、ブレイクなどに先例がある。
ラファエル前派の絵画の特色として、以下のことが挙げられる。彼らは聖書や中世の歴史、シェークスピアやダンテなど文学に主題を得ながら、それを初期ルネサンスの画家に倣った徹底した細密描写が特色であり、光と影を追求した印象派の絵画とは異なり、画面のすべての部分に均等に光が当たっているように見える作品が多い。因習にとらわれない構成で描いて、神秘と象徴の世界を作り出した。
しかし、明確な理論をもつことができなかったラファエル前派は、1853年にジョン・エヴァレット・ミレイがロイヤル・アカデミーの準会員になったことなどをきっかけに、数年後、グループは解散した。

スイスのアルノルト・ベックリーン(1827-1901)は、聖なる森-アルノルト・ベックリーン作物質主義の現代を捨て、どこにも見出せない理想の国を目指した。イタリアに行った彼は、そこに敬虔な中世の修道院ではなく古代の神々のすむ世界を見出し、ディオニュソス的(陶酔的、激情的)な生命力と死の静寂の漂う作品を残した。キリコをはじめシュールレアリズムの画家達にも多くの影響を与えた。

フランスでは、ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)とギュスターヴ・モロー(1826-1898)が、19世紀前半のロマン派と世紀末をつないで象徴主義の重要な画家である。
シャヴァンヌは、人物や風景に見られる、立体感、遠近感や陰影に乏しい平面的で装飾的な処理、平面性を意識した静寂で威厳ある構図、中間色を多用した、抑えた色調が彼の画風の特色である。彼のこうした装飾的な画面構成や落ち着いた画風は、瞑想的な雰囲気を生み出しており、大画面の壁画に適したもので、パンテオンの壁画(1874−1878年)、ソルボンヌ大学の壁画(1887年)をはじめ、フランス各地に大画面の記念碑的作品を残している。ゴーギャン、ドニ、ピカソなどに影響を与えた。
モローは聖書や異教的な神話を題材にしながら抽象的な観念を引き出した画家である。「オルフェの首を運ぶトラキアの娘」1865年 モロー作The Dancer's Reward, for "Salome", 1893 ビアズリー作モローが作り出した驚くべきイメージ、とりわけサロメ(キリスト教の新約聖書中のエピソードで、母ヘロディアの命によって古代パレスチナの領主ヘロデ・アンティパスから舞踏の報償として洗礼者ヨハネの斬首を求めた女性のこと)のような邪悪で魅惑的な女性像は、ビアズリー、クリムトなどの画家や世紀末の文学、音楽全般に大きな影響を与えた。1892年、モローはエコール・デ・ボザール(官立美術学校)の教授となった。モローの指導方針は、弟子たちの才能を自由に伸ばすことであった。エコール・デ・ボザールのモローの元からはマティスとルオーという2人の巨匠が生まれている。

オディロン・ルドン(1840-1916)は、版画を銅版画家ロドルフ・ブレダンに学ぶ一方、「キュクロプス」1895-1900 ルドン作ドラクロワの絵画や当時の文学、音楽に深く親しんだ。彼は最初に版画家として、ニュアンスに飛んだ黒の世界の中に夢や神秘、憂うつな情緒や無意識のおののきを幻想的に表現した。1890年代以降、草花やギリシア神話を題材にパステルや油彩による彩色画を制作、象徴主義の最も豊かな絵画表現を生み出した。

象徴主義は19世紀末にはベルギー、オランダ、スイス、オーストリアなど全ヨーロッパに広がった。ユーゲントシュテイル、アール・ヌーヴォーなどの世紀末芸術と密接に絡み合いながら、印象主義と同様に20世紀芸術を準備した。

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