色彩の錯覚と錯視効果|視覚の生理現象と心理学

色彩の錯覚と錯視効果から感じ取れる心理作用や生理的現象を絵画に応用する

デッサンと言う礎|デッサンの描き方と基礎

色彩の錯覚と錯視効果

視覚の生理現象と心理学|デッサンの描き方と基礎技法

色対比から色彩の錯覚、錯視効果を考える

環境が変わったり、状況が変わることで、ある色を見ると物理的に同じ色であるにもかかわらず、その色を見ると単独で見るのとでは違って見えることがあります。

2つの色が相互に影響して、色を単独で見るのとは違って見える現象を色対比といいます。

色対比には2つの色を空間的に同時に見ることで生じる同時対比と、2色の色を時間的に順次見ることで生じる継時対比があります。

こういった対比現象には残像現象の原理が深く関係していると考えられています。

残像現象

残像現象とは、赤い色の紙をしばらく見た後に、そのままの状態で白い紙に視線を移すと、白い紙に青緑色の像が浮かんできます。これが残像ということになります。

これを応用してオレンジ色の用紙をしばらく見た後に、黄色の用紙に視線を移すと、緑色の像が浮かんできます。これはオレンジを見ることで青色の残像が生じて、黄色の用紙と混色したと考えられます。

これは赤を見た場合、網膜部分の赤に対する感度が低下し、補色にあたる青と緑を感知する網膜上の感度が上昇する生理的な現象のために、青緑色の像を生じさせています。

私達の視覚は、ある色を見つめることで、その反作用で補色が生成されていると考えられます。色対比を考える場合、この残像現象の原理がかかわってきます。

残像現象

同時対比

色相対比…色相の変化

右の図では赤色を背景にしたオレンジ色と、黄色を背景にしたオレンジ色があります。赤色を背景にしたオレンジ色は赤の補色である青緑色方向に誘導され黄色へ近づくことで、オレンジ色を単独で見る場合に比べて黄色っぽく見える。

一方黄色を背景にしたオレンジ色は黄色の補色である青紫色方向へ誘導され赤色へ近づくことで、オレンジ色を単独で見る場合に比べて赤っぽく見える。

ここでは残像現象の原理が大きく働いていると考えられます。

色相対比

補色対比…彩度の変化

右の図では、青緑色の背景に配置されているピンク色の図と、赤色の背景に配置されているピンク色の図があります。

青緑色の背景の場合、補色にあたる赤色の補色を生成すると考えられ、ピンク色を単独で見たときよりも、ピンク色は彩度が高くなります。

一方、赤色が背景の場合、補色にあたる青緑色が生成すると考えられ、ピンク色を単独で見たときよりも、ピンク色は彩度が低くなります。

ここから、補色関係にある2色は、お互いの彩度を高め合うことが分かり、絵画制作では色彩上、強い絵にすることができます。

一方、補色関係にある色同士を組み合わせは、お互いの色が主張し、全体のまとまりを失ってしまうこともあり、扱いに工夫が必要かもしれません。

補色対比

明度対比…明度の変化

右では、白色を背景にした灰色と、黒色を背景にした灰色の図があります。

白色の背景の場合は単独で見た灰色となんら変わらないですが、黒色が背景の場合の灰色は、単独で見た灰色よりも白色へ近づいて見えることが分かります。

明度対比

彩度対比…彩度の変化

右のF1では、鮮やかなオレンジ色を背景にした鈍いオレンジ色と、灰色を背景にした鈍いオレンジ色の図があります。

背景が灰色の場合、鈍いオレンジ色は彩度が鮮やかに見えます。

これは、背景の灰色の彩度が鈍いオレンジ色よりも低いことで、鈍いオレンジ色は本来の彩度よりも鮮やかに感じられます。


ここで補色対比と彩度対比ではどちらが鈍いオレンジ色の彩度を鮮やかにさせるか実験してみました。

F2を見てください。オレンジの補色にあたる青色を背景にしたものと灰色を背景にしたものでは、補色対比にあたる青色を背景にしたほうが鈍いオレンジ色を鮮やかにさせるようです。

F3では、灰色の背景を青色の背景の明るさにして、実験してみました。結果はF2と同じように、青色を背景にした方が鈍いオレンジ色は鮮やかに見えます。しかし、F2とF3の灰色の背景を比べた場合、明度対比の効果なのか、F3の方が鈍いオレンジ色の彩度は鮮やかに見えます。

F4では、F3の灰色の背景の変化に着目し、思い切って真っ黒にして比べてみました。すると、鈍いオレンジ色は、ほぼ同じ鮮やかさに感じられるようになりました。

これらは、絵画制作の上では興味深いもので、色彩を制御する時のヒントになることでしょう。

彩度対比

継時対比

空間的に同時に見ることで生じる同時対比を見てきましたが、今度は2色の色を時間的に順次見ることで生じる継時対比について見てみたいと思います。

右の図を2分ほどみた見た後に、白い用紙を見ると、日の丸の像が浮かんできます。

残像現象で触れましたが、補色にあたる色を生成して、それが残像として浮かんでくる生理的現象です。

ここからいえることは、ある色を見るとき、前に見た色の影響を受けているということです。正確な色を判断する時に注意が必要でしょう。

継時対比

色の同化現象

右の図では、隣り合う色同士の属性が近づいて知覚される現象です。

赤色の背景に黄色のストライプを柄として入れると、赤色の背景は黄色に近づいて、全体的にオレンジ色に近づいて知覚されます。

赤色の背景に青色のストライプを柄として入れると、赤色の背景は青色に近づいて、全体的に紫色に近づいて知覚されます。

この同化現象では個々の色が知覚される点で混色とは異なります。

色の同化現象

色の進出・後退と膨張・収縮

色の特性として、前に出てくる進出色と逆に後退する後退色があります。

進出色として一番知られるのが暖色系といわれる色で赤色やオレンジ色などになります。また、後退色は寒色系といわれる色で青や緑色などになります。また、有彩色の方が無彩色よりも進出しやすいです。

色の特性は、通常の大きさよりも大きく見える膨張色や逆に小さく見える収縮色があります。

膨張色は進出色とほぼ同じです。明るい色や暖色系の色は膨張して見え、逆に暗い色や寒色系の色は収縮して見えます。

ただ、明度によって、微妙に膨張、収縮は大きく変化します。寒色系の明るい色は、暖色系の暗い色よりも膨張して見えるといえます。また、背景の色によっても変化していきます。

純色に注目して膨張色のランクを付けると、黄色、オレンジ色、緑色、赤色、青色の順番になるといわれています。

色の進出・後退と膨張・縮小

色の視認性と可読性

ものを見るとき、対象となる物の存在や形状の見えやすさの程度を色の視認性といいます。

また、文字や記号、図形の読みやすさの程度を色の可読性といいます。

どちらも背景色との色の差に関係があり、明度差が大きく関わっています。

下の図は純色の赤、橙、緑、青、紫と白、灰、黒を組み合わせた可視度の順位です。

色の視認性と可読性
順位 地の色 形の色
1
2
2
4
4
6
7
7
9
9
東京商工会議所 編 カラーコーディネーター検定試験3級テキストより引用

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