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石膏デッサン(面取り)-鉛筆デッサン描き方

アグリッパ(面取り)の石膏デッサンは鉛筆で描かれました。この石膏デッサンの制作過程を参考にして独自の描き方を模索しましょう。

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石膏デッサン(面取り)-鉛筆デッサン[YouTube動画]

石膏デッサン(面取り)の動画と共に、このページのデッサン制作過程の解説も参考にしてください。
※この動画は静止画像の連結動画です。

鉛筆デッサンのモチーフ(石膏像)と画材

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)のデッサンに取り組みます。

この像はもともとあるアグリッパ像の細かなディテールを省き、面として強調された特殊な石膏像です。その目的はデッサンなどの造形的手法を習得するために作成されたものとして考えられます。

光に対する面の向きによって石膏像がどのように変化するかを容易に観察でき、石膏像の明度差、陰影をデッサンしていけば立体感を得ることが可能なのです。その観察眼を養い見方を学ぶにはデッサンの材料として適しているかもしれません。

面取りデッサンの異論反論

現在でもこのような石膏像を利用してデッサンの訓練はされています。
しかし、この訓練は安易にデッサンを考えてしまい、悪癖をもたらすと懸念する考えを持っている指導者もいます。
この石膏像を利用したデッサンの習得は有効ではあるものの、その中で培われる技法や考え方は一面であり、多種多様なデッサンの世界では一つの考え方、見方であることを踏まえておく必要はあるでしょう。逆に言えばデッサンの重要な要素の一つを習得するには面取りデッサンは適しています。

アグリッパとは?

マルクス・ウィプサニウス・アグリッパ(ラテン語: Marcus Vipsanius Agrippa, 紀元前63年 - 紀元前12年)は、古代ローマの軍人、政治家でローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの腹心。のちにアウグストゥスの娘婿となる。 ガイウス・ユリウス・カエサルに見出され、軍略の弱いアウグストゥスの補佐的役割を果たした。また、パンテオンやポン・デュ・ガールなど多数の建築物を建造した。 ウィキペディア

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)モチーフ

【サイズ】65×50cm
【材料】木炭紙大画用紙、鉛筆、練り消しゴム、プラスチック消しゴム、ティッシュペーパー、サッピツ、デスケル

石膏デッサン(面取り)の描き方・制作過程

石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程1

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程1

まず、実物のアグリッパと同じ大きさに描けるくらいの画用紙を用意します。最初に画用紙の中心点を定規で測って十字に線を入れています。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程2

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程2

画用紙の中心点を基準にして、アグリッパを真ん中に配置しています。
面の変わり目を中心に石膏の形態を点と線で描いています。
大まかな石膏像の形を画面に描いていきます。石膏像は画面に対して小さすぎず、大きすぎないことが一般的に行われる石膏デッサンの配置の仕方です。
そのコツは、石膏像の形だけを見ず、余白の形にも気を使っていくことです。余白があまりにも多すぎたり、少なすぎることは、結果的にデッサン全体のバランスを失ってしまいます。

石膏像全体の配置が決まったら、石膏像の部分部分の形態を描いていきます。
この時、線が交わる部分である点を中心にして、部分部分の形を正確にとるようにし、全体の形態も同時に正確かどうかも確認していきます。点と点を縦や横、斜めなどあらゆる方向から図り棒などを使って、計測し形態の狂いを正していきましょう。
面の変わり目に合わせて、点と点を結んでいくことで石膏像全体の形態が把握できるようになるでしょう。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程3

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程3

B2くらいの柔らかい鉛筆をねかせて、明度が低いところを中心に陰影を描いています。
白に近いところは極力手を入れないようにしましょう。

この段階前後で、今一度石膏像の形態の狂いをしっかり見直しましょう。この製作者は形態の狂いに気が付かないまま、このままデッサンを続けました。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程4

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程4

背景を中心に一度ティッシュペーパーなどで柔らかいトーンをつくっています。

その後、特に暗い部分を中心に描くことで、トーンの幅を広げているように見えます。また、土台にも最初から気を配りながら描き進めています。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程5

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程5

背景を描きながら、石膏像全体が前面に出るように描いています。

主に画面全体の横の動きを中心に描いているようです。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程6

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程6

部分部分の特徴を描き進めながら、全体も同時に描き進めています。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程7

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程7

ポイントとなる部分を中心に、暗い部分は3Bや4Bなどの柔らかい鉛筆を使いながら、しっかり明度を出しながら描写をしています。逆に明るい部分は2Hや3Hなどのかたい鉛筆を使って明るい中の形態を描写しています。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程8

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程8

画面全体の横の動きだけでなく、画面全体の縦の動きや斜めの動きなどにもしっかり描いていくことが必要でしょう。

うまく描写していくことで全体の大きな動きや立体感を表現でき、細かな部分の描写も容易になるでしょう。

この製作者はもっと全体の大きな動きを描写するべきです。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程9

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程9


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程10

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程10

石膏像の土台をしっかり描きだしたので臨場感が生まれつつあります。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程11

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程11

石膏像の面一つ一つの明るさの変化に注意しましょう。均一の明度ではないでしょう。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程12

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程12

石膏像の面の変わり目は質感が最も現れる部分です。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程13

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程13

土台のパースはしっかり描いていきます。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程14

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程14

描写する方向は横ばかりではなく縦や斜めの方向へ描写しましょう。

その描写の方向は画面全体の動きを感じ取ることが必要です。どのような描写が感じた動きを表現できるか試行錯誤しましょう。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程15

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程15

ここまで進んで今更ですが、塗り絵ではないので塗りつぶす描写は基本的にデッサンを台無しにします。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程16

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程16

描くべきポイントを制作者自身が決めて、ひたすら描き進めましょう。

石膏像というデッサンの課題があったとしても石膏像のどこを描くか!?どのように描くか!?は制作者が自由に決めて描けるはずです。描くべきポイントや描写する表現は制作者の個性にかかわります。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程17

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程17

石膏像を描くポイントの描くべき優先順位がある場合、最も優先する部分が描ききれていなければ、その後描かれる部分も描ききれません。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程18

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程18

思った通りのトーンが出せないと思った時は、細かい部分を無視して、思い切った描写をするのもよいかもしれません。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程19

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程19

この段階にきて、なんとなく描かれた感じがします。
何か表現する狙いが足らないような気がします。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程20

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程20

ここまで描いたら、石膏像と背景との関係や土台などとの関係などの最低限描くべきところはしっかり描いてデッサンを完成させましょう。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程21

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程21

画面の縁とモチーフとの関係なども大事です。


石膏デッサン(面取り)-描き方・制作過程22

石膏デッサン-アグリッパ(面取り)の描き方・制作過程22

最終的にわずかですが画面全体にちがう動きが出てきました。もっと早い段階で大きな動きを見極めましょう。

【終了画像】>>>石膏デッサン(面取り)-鉛筆デッサン

デッサンのモチーフ-目次