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デッサンと陰影

モチーフを観察して光や陰影の特性を理解すれば、デッサンや絵画の光や陰影をコントロールすることが容易になります。

デッサンと陰影の言葉

デッサンで影という場合、いろいろな意味にとられることがあります。

そのため特定の部分に注意が向くような言葉遣いが要求されます。

言葉による混乱がないように、良く使用される陰影についての言葉と意味をまとめてみました。

明部
光源から発せられる光が直接あたる部分。
暗部
光源から発せられた光が遮られ直接あたらない部分。
明暗境界線
明部と暗部の境界。
陰影
陰影とは光が物体などで遮られることでできる陰と影。
陰(shade)
陰は光を遮ることによってできた物自体の暗部の領域を指す。
影(shadow)
影は光が物自体によって遮られて、地面などにできる物自体の形状を伴った暗部のこと。
投影、影法師、ドロップシャドウ
物によって光が遮られることで物の形状が地面などに映し出されてできた影ののこと。『影』や『シャドウ(shadow)』では誤解があるため、この言葉を使う場合がある。
シルエット
対象の輪郭の中を塗りつぶした単色の画像がシルエット。シルエットは、あらゆる物やイメージを一つの形に象徴化して、芸術作品やデザインに利用される。
例えば影絵や切り絵、ピクトグラムなどで利用される。ピクトグラムとは人物の運動表現を単色のシルエットで表現したデザイン。

デッサンにおける明暗と反射光

下図は光源からの光が球体に照射されている図です。

球体は地面に接地せず、浮遊している状態を表現しています。板状のものは反射する光のイメージ図になります。

デッサンにおける明暗と反射光
デッサンにおける明暗と反射光

球体は明部と暗部に大きく分かれていますが、暗部ではさまざまな方向から反射された光の影響で同じ暗さにならないことがわかります。

この図の浮遊した球体の明部と暗部は共に反射光の影響を受けていますが、一番暗い所は暗部の中の反射光の影響が少ない明暗境界線付近になります。

一番明るい所はハイライトを除けば、球体の頂点になり、明暗境界線の方向へ向かって徐々に暗くなっていきます。

また、球体の暗部では反射光の影響が強い面から明暗境界線の方向へ向かって徐々に暗くなっていきます。

赤の矢印はハイライトを示しています。光源の位置と球体の位置が動かなければ、光による明暗は観察者の見る位置が移動しても変化することはありません。しかし、ハイライトは観察者の見る位置が移動するとともに移動します。

デッサンにおける投影の形と性質

デッサンにおける投影の形と性質
デッサンにおける投影の形と性質

上図は、テーブルの上に置かれた球体を手前左上からの光源の光が照射した状態です。

この図では、投影がどのように描かれているか、補助線の矢印に注意して観察してほしいと思います。

矢印は、光源から光が直進していることを表していています。明暗境界線を境に球体の陰が生まれ、明暗境界線の形状が反映されてテーブルに投影されます。

この時、投影される影の形は明暗境界線の形状とテーブルの形状、光の角度で決まります。これは、球体だけでなく、どのような形でも同じです。

デッサンにおける光と影の要素

下図では、上図のなかにある写実的に再現されるデッサンで描くべき要素をA~Hに分けてみました。

球体に光があたった時に、A~Hにどのような変化と特徴があるか考えてみてほしいと思います。

また、球体だけでなく円錐や円柱、正方形ではどのような違いがあるか、色々想定して考えてみてください。

デッサンにおける光と影の要素
デッサンにおける光と影の要素

  • A…手前左上方向からの光源の光が作り出した明暗境界線です。デッサンでは光源の場所を特定し、どこが明暗の境界なのか把握して描いていきます。球体の明暗境界線はBとCに分けていることを表しています。
  • B…光源からの光が直接照射された明部です。
  • C…光源からの光が直接照射されない暗部です。テーブルにあたった光が反射して陰のなかで明度が微妙に変化します。
  • D…光源からの光に対して正面を向いている面で、ハイライト以外で一番明るい面です。
  • E…ハイライトです。光源を反射している光なので、最も明るいです。
  • F…球体の陰のなかであまり反射光の影響を受けていない特に暗い部分です。
  • G…球体が光を遮ることでできた投影です。くるくる回る矢印は、光源から直進している光が明暗境界線で遮られていて、その境界線の形状が投影の形状に反映されています。
  • H…球体とテーブルの接地面付近の影は光が入り込む余地が少ないため暗くなります。

デッサンにおけるハイライトの性質

デッサンにおけるハイライトの性質
デッサンにおけるハイライトの性質

上図のように、光源とモチーフの面が固定されているとき、観察者から見えるハイライトは、光源からの面に照射する光と反射する光の角度が等しくなります。

観察者が移動すれば、ハイライトも移動します。光源が移動してもハイライトは移動します。面の角度が変わってもハイライトは移動します。つまり、常に光源と観察者の間のモチーフの面に対する光の入射角と反射角が等しい状態を保ちながらハイライトが移動します。

また、光源とモチーフが固定されていて一定の光が照射されているとき、観察者が移動することでハイライトが移動していても、光によるモチーフの明部と暗部の状態は変化しません。

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