デッサンと言う礎

人物クロッキーの準備と基本

人物クロッキーをはじめるためのマナーから、道具選びと描き方について学びましょう。人物クロッキーでは女性と男性のヌードや着衣でのポーズを描いていきます。

人物デッサン上達のための人物クロッキー

デッサンで人物を描くのは難しいものです。初心者は、どのようにして描けばいいか分からない人は多くいると思います。

その理由として、人体には筋肉や骨格によって表面上、簡単には理解できない形状があったり、人物が身につけた衣服が人体の描写を難しくさせたりするからです。さらに肌や髪の毛の質感や陰影の表現方法は想像以上に難しいうえ、人物全体の動きやふくらみ、各部位にあるニュアンスまで描き分けるのは簡単ではありません。

また私たちは人物を普段から見慣れているため、描かれた人物表現が稚拙だとすぐに分かってしまいます。

人物デッサンの技術力や感性を高める近道は人物クロッキーを描くことです。人物クロッキーでは人体の筋肉や骨格の構造や動き、プロポーションを理解し、その表現方法を学ぶことができます。

人物クロッキーの表現方法の向上のためには、人物デッサンで必要となる要素に分けて徐々に技術と感性の向上を図る必要があります。その結果、人物デッサンでの質感や陰影表現などの向上を実現します。

人物クロッキーにおける主な学習内容

人物クロッキーは、1~20分くらいの短時間のポーズや瞬間のポーズ、連続したポーズ、動きのあるポーズなどさまざまなポーズをモデルがしてくれます。それらの魅力あるフォルムや動き、リズム感、印象を瞬時に捉え描写し表現していかなければなりません。

それは、画面全体のバランス、重心なども考慮して描かなければならず。無駄な線がないように努力する必要があります。

描きはじめは形を捉えていきます。用意したクロッキー帳に人物をどのくらいの大きさでどの位置に配置するか構図も瞬時に考えます。

このとき線で人物全体を捉えていくことが人物クロッキーではオーソドックスな手法になります。何故、線で描くのかはさまざまな理由があります。例えば短時間で人物の量感や動きを表現するために線で描く方が効率よく、線の太さや強弱で空間を表現できる点があげられます。

短時間による人物クロッキーは意識的描写から無意識的な描写へ移行する段階が制作過程では見られます。その時描かれた線の形態の美しさは長時間で描かれる人物デッサンでは表れないもので、感性そのものが表出した描写になります。

枚数を重ね、人物クロッキーに慣れてくると、線だけではなく陰影描写や色彩描写へ徐々に移行していきます。この段階へ到達するにはかなり熟練した技能が必要になります。その技能は裁判の状況を描く法廷画家くらいの技能が必要になります。線での表現が稚拙な人が、陰影や色彩など多くの要素を取り入れることはおススメしません。

クロッキーの初心者は線によって人物や空間を捉え、独自の魅力的な形を引き出すことを念頭に描いていくと良いと思います。

線だけでできることは無限にあり目的次第です。例えば"人体のフォルムの骨格や美しさを捉える"、"人体の陰影の境目(稜線)を捉える"、"人体の量感を捉える"、"人体全体の動きを表現する"、"女性モデルのアンニュイな感じを捉える"、"モデルのエロティシズムを捉える"、"モデルとアトリエ全体の空間を捉える"などさまざまなことが線だけで表現できます。

人物クロッキー会でのマナー

人物クロッキーは通常、ヌードと着衣のどちらか一方で行われます。男性の場合もあれば女性の場合もあります。大きなアトリエや学校だと、ヌードと着衣、男性と女性が混合されて行われる場合もあります。

通常、人物クロッキー会では2時間30分の中でタイムテーブルが作られていて、6ブロックの時間割の中で、1分から20分ほどにさらに細かくポーズ時間が割り振られます。ブロックとブロックの間で5分ほどの休憩があります。
(※下記…タイムテーブルの例)

テーブル ポーズ時間詳細
1 10分ポーズ × 2回
5 分休憩
2 5分ポーズ × 4回
5 分休憩
3 5分ポーズ × 1回 + 3分ポーズ × 5回
10分休憩
4 2分ポーズ × 10回
5 分休憩
5 5分ポーズ × 4回
5 分休憩
6 10分ポーズ × 2回

人物クロッキー会に参加するには始まる15分以上前には到着し、料金の精算をして、自分の場所を確保しなければなりません。いい場所で描きたい人は30分以上前には到着しています。

到着したらイーゼルと椅子、画板を描きたい場所にセッティングして、画材の用意をします。この作業をモデルさんが来るまでの間に完了させましょう。通常イーゼル、椅子、画板はアトリエに用意されています。事前に確認しておきましょう。

モデルさんが来るまでに特に注意したいことは、カメラ機能の付いたスマートフォンなどはバックにしっかりしまっておくことです。カメラ機能が作動していなくてもモバイル機器が見える場所に置いてあると、モデルさんに失礼だし、モデルさんのやる気を損なわせてしまいます。モデルさんが帰ってしまうこともありますので気を付けましょう。

時間になりポーズが始まると、アトリエの外にいる人は、1つのブロックが終わるまで入室することはできません。トイレは早めに済ませてポーズ開始前に着席しましょう。

ポーズが始まるときはモデルさんに対して「お願いします」、ブロックの最後で「ありがとうございました」または、「お疲れさまです」と言います。これをブロックの始まりと終わりで言います。

クロッキー会が終了したら、イーゼルや椅子を片付けて、身の周りを掃除して帰ります。

以上を参考にアトリエではマナーのある態度で作業を行いましょう。

人物クロッキーの道具

人物クロッキーを含めクロッキーは基本的に単色で描くことが一般的で、その道具はさまざまです。通常、鉛筆を使う人が多く、初心者は4B~6Bの鉛筆をおすすめします。ほかにコンテ、ペン、墨、アクリル、水彩など使用しても良いと思います。多くの画材の中から自分の表現にあう描画材を探すとよいでしょう。

描く用紙は市販のクロッキー帳を用意すると良いと思います。初心者は制限された時間内で描ききることを一つの目的として、用紙のサイズは自分の能力に合ったサイズを選ぶことをおすすめします。通常、人物クロッキーで使用されるクロッキー帳のサイズはF6、F8、B3サイズです。

ポーズの時間ごとにクロッキー帳のサイズを変更することもできますが、B3サイズのクロッキー帳を用意したら、ポーズ時間が変わっても、同じクロッキー帳を使用する方が上達は早いです。

人物クロッキーに慣れてきたら、大きな画面で描いてみてください。10分~20分が主体の人物クロッキーで木炭紙大サイズ(F15)のクロッキー帳へ挑戦することで、クロッキーだけでなくデッサンや絵画の描写力が向上します。

下記は人物クロッキーでの時間とサイズの使い分けの例です。

  • 1分、2分クロッキー…B4、B3、F6、F8サイズのクロッキー帳
  • 5分クロッキー…B4、B3、F6、F8サイズのクロッキー帳
  • 10分クロッキー…B3、F6、F8、木炭紙大サイズ(F15)のクロッキー帳
  • 20分クロッキー…B3、F6、F8、木炭紙大サイズ(F15)のクロッキー帳

大きさを決定するのは、デッサン力の差や描く目的にあると考えられます。しかし、"小さい画面ではデッサン力を高めることができない""小さく描写してしまう癖がついてしまう懸念がある"などの理由から常に大きな画面で描く人もいます。

人物クロッキーに最適なF3サイズのクロッキー帳

F3サイズのクロッキー帳は、人物クロッキーでは構図の取りやすいサイズであることから多くの人に利用されています。人物クロッキー初心者には一回り小さいF6サイズのクロッキー帳をおススメします。

ミューズ クロッキーブック B3 Q-0353

■商品の説明
・原料にケナフ(植物パルプ)を配合したケナフクロッキー帳

■商品仕様
・サイズ:B3(約364×515mm)
・紙色:ホワイト
・入数:ケナフクロッキー50枚
・仕様:スパイラル綴じ・本型

人物クロッキー初心者が揃えるべき道具3点

  • 6Bの鉛筆…三菱鉛筆のハイユニ
  • 練り消しゴム…バニー イージークリーナー
  • クロッキー帳…ミューズ ケナフクロッキーブック F6・Q-0306

初心者は上に挙げた3つの道具だけ揃えれば、クロッキー会で満足いく作業を行うことができます。

クロッキーでは大量の鉛筆とクロッキー用紙を使用しますので、鉛筆とクロッキー帳は多めに用意しておくと便利です。

クロッキー用紙と経済性

1分、2分、5分の人物クロッキーは、クロッキー用紙を一日で20枚、30枚と多くの紙を消費するので、コピー用紙などの安価な紙が使用される場合があります。しかし、コピー用紙は摩擦が少ないために思う様な描写ができないので、おすすめできません。

そこで初心者におすすめしたいクロッキー帳は100円均一で販売されているクロッキー帳(左画像)です。100円均一の販売店では、A4サイズ(210×297mm)で40枚のクロッキー帳とB4サイズ(257×364mm)で25枚のクロッキー帳があり、コピー用紙よりもおすすめできる紙です。

お金に余裕がなくて大きな用紙に描きたい人は、100円均一などで画用紙が販売されているので、それを使用しても良いと思います。ただ、人物クロッキー会では一回の参加で20枚前後描くことになるので、かさ張り保存は大変です。

100円均一クロッキー帳
100円均一B4サイズ(257×364mm)クロッキー帳

下に掲載したクロッキーは100円均一のB4クロッキー帳に描かれています。クロッキーにだいぶ慣れてきた人の作品ですが、まだまだ未熟な作品で、骨格や筋肉の形状、動きなどの理解の浅さが、その要因といえるでしょう。この段階に来れば、もっと大きなクロッキー帳を用意して描いていく方が上達が早いと思われます。

人物クロッキー参考作品02

■人体クロッキーの制作時間と道具

  • 時間…5分
  • サイズ…B4(100円均一のクロッキー帳)
  • 描画道具…B6の鉛筆

  1. クロッキーとは何か?
  2. 人物クロッキーの準備と基本
  3. クロッキーの道具
  4. クロッキーのための参考書
  5. 巨匠が描いた作品からクロッキーを考える
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