デッサンと言う礎

縁辺対比を誇張する

縁辺対比という認知的現象をデッサンや絵画の中で応用できれば空間表現が劇的に変わります。

絵画から読み取れる縁辺対比

アンドリュー・ワイエス『踏みつけられた草』
アンドリュー・ワイエス『踏みつけられた草』

上図は、アンドリュー・ワイエスの『踏みつけられた草』という絵です。

まず、 足と背景の草原との関係をごらんください。

ブーツと草原との縁辺(境界)付近の表現を見ると草原側の明度は、縁辺付近にない草原と比較して明度が高く、質感は弱く感じられます。このような表現によりブーツは前面へ押し出されていることが分かります。

また、ブーツの底から上に行くに従い、明度の変化や質感表現の弱さの範囲が広がっていることが分ります。

これはブーツの底の部分は草原と接地していることを表現するために縁辺対比が抑えられています。そして上に行くに従い、背景との距離との関係から縁辺対比の広がりは大きくなることがわかります。

この絵はブーツに目線が行きがちですが、ブーツより前面にあるのは踏みつけられた草で、その草が右足に踏みつけられていて折れ曲がっています。折れ曲がった草の先の方は地面から浮いていてその地面との距離感は描写の描きこみの度合いから認識することができます。ここでは縁辺対比ではなく、草の描きこみと背景の描きこみの省略から表現しているように見えます。

また、黒い部分は透明度があり、逆に白い部分は抵抗感あるので。その対比によって認識力が高められています。このように縁辺対比という現象以外にも、さまざまな対比が利用されて、複合的に絵画が構築されていることが分かります。

縁辺対比を利用した絵画の構築

アンドリュー・ワイエス『Christina's World』
アンドリュー・ワイエス『Christina's World』

上図はアンドリュー・ワイエスの『Christina's World』です。

この絵から再度、地面と人物との距離感などを感じ取ってみてください。

横たわった人物の背景である地面は適度な距離感をとりながら質感を変え奥へ収まっています。

そして、右奥の描きこまれた建物は、メインの人物を強調し、全体の間合いやバランスを支える要素となっています。

この絵では人物をとりまく空気感が感じられます。人物を中心に縁辺対比を取り入れ、波打つように明度や抵抗感の変化を与えることで空気感のある空間がつくりだされています。

今回はアンドリューワイエスの絵画から縁辺対比という絵画の要素を紹介しましたが、縁辺対比は、写実的な絵画のみに扱われるものではありません。絵画における表現描写では具象絵画、抽象絵画問わず重要な要素です。

参考:明度の錯覚と錯視効果-形の認知現象と心理学

デッサン描き方と基礎技法-目次