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油絵で使うブラック(黒色)の種類と特徴

ブラックの種類と特徴

油絵具にはさまざまなブラックがあります。

絵画制作のスタイルによって、ブラックを使い分ける場合があります。

よく知られている油絵用のブラックには主に5種類あります。

ホルベイン製のブラックを取り上げて説明しますが、マルス ブラックはホルベインにはないのでクサカベ製のものを説明します。

また、画材メーカーによってブラックの特徴には多少の違いがみられる場合があります。

簡単にそれぞれのブラックの特徴や用途について理解しましょう。

アイボリ ブラック(アイボリー ブラック)

  • 顔料:PBk9,7(炭化した動物の骨)
  • 透明度:不透明
  • 特徴:炭化させた動物の骨を顔料とした赤みのある暖色系のブラックです。ホワイトに混ぜると、赤みのあるグレイになります。顔料に象牙(アイボリ)が利用されていたので、この名で呼ばれています。 現在は牛などの骨が顔料として使用されていますが、ホルベインの油一とヴェルネ油絵具では象牙炭が使用されています。乾燥は比較的遅いです。
  • 短所:原料の骨は、炭素とともにカビを生育するリン酸カルシウムが含まれています。アイボリーブラックには防カビ剤が配合されていますが、保存環境によっては完成作品に保護ワニスをかける必要があります。ホルベインでは水彩保護ワニスを推奨しています。

防カビ剤

水彩画用ですが油彩画面でも使用できます。ホルベイン推奨の防カビ効果のある保護ワニス!

ピーチ ブラック

  • 顔料:PBk1(縮合アニリン系の顔料)
  • 透明度:不透明よりの半透明
  • 特徴:顔料に焼いた桃の種が利用されていたので、この名で呼ばれています。現在は縮合アニリン系の顔料でつくられています。 色は暖色と寒色の中間調で、漆黒度が高く、見た目がいちばん黒く感じられるブラックです。多少寒色寄りだと思います。

ランプ ブラック

  • 顔料:PBk6(油の煤)
  • 透明度:不透明よりの半透明
  • 特徴:油が不完全燃焼したときにできる煤が顔料です。青みのある寒色系のブラックです。つやはありません。ホワイトを混ぜると落ち着いたグレイになります。

ブルー ブラック

  • 顔料:PB29 PBk7(ウルトラマリンと炭素系の顔料)
  • 透明度:不透明よりの半透明
  • 特徴:「ブラック」と名はついていても、ウルトラマリンの顔料が含まれた黒に近い青です。ホワイトで薄めると青みが強く出ます。青みがあることで、黒が引き立って見えます。乾燥は比較的遅いです。ブルーブラックのような色はゴッホが描いた絵画やピカソの青の時代の絵画で見ることができます。

マルス ブラック(マース ブラック)

  • 顔料:PBk11(酸化鉄を主成分とする無機顔料)
  • 透明度:不透明
  • 特徴:濃く深い黒色を持つ安定した発色と不透明性があり、着色力と隠蔽力がある暖色系のブラックです。均一な塗り心地と高い耐光性があり、しっかりとした陰影や強調を与えることができます。比較的乾燥が早いブラックです。

使うべきブラック(黒色)の選び方

油絵の具には、さまざまなブラックがあるので選ぶのが難しいですが、暖色系のブラックがほしいのか、寒色系のブラックがほしいのか考えると黒色は選びやすくなると思います。

暖色系のブラック

暖色系ならアイボリーブラックかマルスブラックです。ただし、人によっては、マルスブラックから青紫色が感じられるので寒色系に位置づけられる場合もあります。

2つのうち乾燥が早いのがマルスブラックですが、混色しやすく隠蔽力が弱いのがアイボリーブラックです。

個人的におススメしたい暖色系のブラックはアイボリーブラックです。マルスブラックは着色力が強く隠蔽力が強すぎるので、混色しやすく下層の色味を隠蔽しすぎないアイボリーブラックがおススメです。

寒色系のブラック

寒色系ならピーチ ブラックかランプ ブラックです。2つのうちランプ ブラックの方が青く感じられるので、ランプ ブラックほどの青さが必要なければピーチ ブラックを利用するべきだと思います。

またピーチ ブラックはランプ ブラックよりも着色力と隠蔽力がないので混色や重ね塗りがしやすいと思います。メーカーの説明では寒色と暖色の中間に位置しているブラックなので、色味においてもコントロールしやすいと思います。

ちなみにブルーブラックは明確な目的がなければ使用することはないでしょう。

補色同士の混色による黒色

写実的絵画を描くうえではブラック(黒色)は必ず必要な色です。

しかし、黒色を使用しない印象派のようなスタイルで絵画を描くこともできます。

その場合は補色同士を混色してできる無彩色を利用して絵画を描いていきます。

その利便性は、流動的で違和感がない黒色が表現できる点にあります。

そのような補色同士の混色に関する動画があるので参考にしてみてください。

参考サイト

油絵の道具-目次

デッサンの画材と道具を学ぶ