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乾性油 | 油絵で使う乾性油の使い方と特徴

乾性油とは

油絵の具は顔料に乾性油が練られてつくられています。この乾性油が酸素と反応し酸化重合することで絵の具が画面に固着し、つやを与えます。

揮発性油とは違い乾性油は揮発しないので、絵の具に乾性油を含ませただけ固まるのに時間がかかります。絵の具の厚さにもよりますが、乾性油が完全に固まるには数か月から数年かかるといわれています。

乾性油の種類

乾性油にはポピーオイルとリンシードオイルがあります。それぞれの特徴を理解して、使い方を覚えましょう。

ポピーオイル

【用途】中描き~明るい色の仕上げに向く。黄変しにくいのでホワイトの油絵具の固着成分として配合される。
【粘度】油絵具に流動性を与える。
【艶】透明度と光沢がある。
【乾燥】リンシードより乾燥が遅く、塗膜の堅牢さに劣る。
【成分】芥子(ケシ)油。ケシの種子から搾り取られた油を精製。

リンシードオイル

【用途】中描き~暗い色の仕上げに向く。多くの油絵具の固着成分として配合される。
【粘度】油絵具に流動性を与える。
【艶】透明度と光沢がある。
【乾燥】ポピーよりも乾燥が早く、塗膜を堅牢にする。黄変しやすいので白や淡色の絵具にはあまり練られていない。暗所で黄変が進み、光に当たると漂白する性質がある。
【成分】亜麻仁油。亜麻の種子から搾り取られた油を精製。

他の乾性油については、画用液の種類で確認してください。

乾性油の使い方

乾性油にはポピーオイルとリンシードオイルがありますが、通常どちらか一つ用意すれば問題ありません。

通常、乾性油は描きはじめでは、あまり使用しません。描きはじめは揮発性油(テレピン、ぺトロール)を多く使用し、キャンバスなどの基底材へ絵の具を浸透させます。

それから描き進めていくときに油絵の具の固着力を強めるために揮発性油よりも乾性油の量の割合を徐々に増やしていきます。

急激に乾性油の量を増やすと画面が平滑になり、絵の具を重ねるのが困難になります。徐々に乾性油の割合を増やせば画面は平滑にならず、凹凸のある画面を維持しながら絵の具の層を重ねることが可能となります。

このような仕上げに向けて徐々に乾性油の使用量を増やしていく描き方を"Fat over lean"(ファット・オーバー・リーン)といいます。(fat=太った、over=の上へ、lean=痩せた)

この言葉は、"油分の少ない絵の具の層の上に、より油分を含んだ絵の具の層を重ねて描いていく"という意味があります。

乾性油と揮発性油の使い方の例

  1. 下描き(描きはじめ)では、揮発性油を使います。揮発性油だけで使えるのはこの段階だけです。
    【混合比率】揮発性油100%:乾性油0%
  2. 中描きの段階では、固着力と皮膜を強くするために乾性油を加えていきます。段階的に乾性油を増やすのは、絵具の浸透性を維持し加筆を促すためで、中描きの段階では控えめにしたいです。
    【混合比率】揮発性油50~70%:乾性油30~50%
  3. 上描きの段階で完成に近づくため、透明度と光沢を考慮して、最終的な画肌に近づけるように乾性油を増やして調整します。
    【混合比率】揮発性油30~50%:乾性油50~70%
  4. 仕上げの段階では、画面全体の透明度と光沢なども考慮しながら油を調整し、修正加筆を繰り返します。
    【混合比率】揮発性油20~50%:乾性油50~80%

乾性油の廃棄方法

乾性油は酸素と反応すことで高温になる性質があります。そのため乾性油を含んだ紙や布は発火する可能性があるので、乾性油を含んだ紙や布などを廃棄するときは、水を含ませて、酸素と反応しないように袋に入れて廃棄しましょう。

乾燥促進剤も乾性油と同様に高温になり発火する場合があるので、廃棄する場合は同様の方法で廃棄しましょう。

乾性油の使い方は、初心者が覚えたい画用液の使い方も参考にしてください。

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