マッスとボリュームとは?
マッスは絵画全体における相当量の塊や"まとまり"を意味します。対してボリュームは量感や立体感を意味しています。このマッスとボリュームのかかわり方を知って、デッサンの制作に役立てていきましょう。
美術界でいうマッスとボリューム
Massマッス=(定まった形のない)を直訳すると塊を意味し、辞書では、一団、集団、大衆、庶民、質量などと定義されています。それに対してVolumeボリュームは、体積、容積、量、などと定義されます。
絵画制作など美術界で使用されるマッスは、同一の光や陰影、色彩による画面内での相当量の塊(かたまり)、"まとまり"を意味します。マッスを量塊と言うことがあります。
それに対してボリュームは体積や容積、重さを感じさせる量感や立体感を意味し、物体の形状や大きさ、奥行きを示す際に使用されます。ボリュームのことを量感がある、量を感じるなどと言うことがあります。
以上のように、マッスは主に光と陰影、色彩の表現に関連し、物体の表面の質感や形状を強調するために使われます。一方、ボリュームは物体の空間的な存在感や立体感を表現するために使用され、物体の形状や大きさを示します。
彫刻からマッスとボリュームを考える
彫刻作品は立体であるためマッスとボリュームが一体となって制作されていきます。
それに対して写実的な絵画では明暗法による描写によってボリュームが形成され、その結果マッスとボリュームが一体になります。
しかし絵画のマッスは平面に立体感を表現したものである必要はないので、ボリュームとマッスは彫刻のように一体にならず、ボリュームが感じられない場合もあります。
平面的な絵画であれば、描かれている対象と背景が一体になることもあるので、絵画におけるマッスとボリュームは流動的な側面があります。
マッスとボリュームの関係
マッスとボリュームの解釈は人によってばらつきがあるので、さらに考えてみたいと思います。
マッスは絵画全体に関わる相当量の塊や量、"まとまり"です。マッスは絵画の画面全体のバランスで形成されますが、"まとまり"の基準はありません。
そのため造形の要素がどのように群化されているかが重要で、光や陰影、色彩、群像や植物などの塊や"まとまり"などはマッスと捉えられます。
マッスが形成された中にディテールが描かれるときにはマッスが損なわれないように注意する必要があります。
対してボリュームは体積や容積、重さを感じさせる色や形における量感や立体感です。量感や立体感には質感も含まれるため質量感などとも言われます。
ボリュームである量感や立体感を表現する手法は明暗法(キアロスクーロ)がよく知られています。この手法によって人物が表現されればボリュームによって人物のマッスも形成されることが考えられます。
このときボリュームとマッスを同一視してしまいますが、ボリュームはマッスを壊さないように描かれ、マッスは画面全体の中で、ほかのマッスや造形の要素とバランスをとる必要があります。
例えば人物を描くとき、画面全体のバランスを優先しながら人物のマッスが表現されます。このマッスのバランスを損なわないようにボリュームは描かれていきます。
明暗法によって人物のボリュームが表現するときは、画面全体のバランスを壊さないように表現しなければなりません。
ボリュームと明暗法
デッサンや絵画制作でのボリューム表現における明暗法(キアロスクーロ)は、物体に見られる明暗、陰影の関係を利用したモデリングの方法です。
写実的な絵画ではマッスを損なわないボリュームを表現することを可能にします。ルネッサンス以降の西洋絵画で確立され今日に至ります。
モデリングとは彫刻において粘土や石膏などの材料を肉付けすることを意味しています。絵画におけるモデリングは光が生み出す明暗と陰影の性質を利用して平面の中で行われます。