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絵画のテーマと題材、スタイルとは何か

絵画を描くための『テーマ』と『題材』、そして『スタイル』とは何か理解しましょう。これらを理解すると「伝わる作品」「心に残る作品」が作れるようになります。

絵画の『テーマ』とは何か

簡単にテーマを一言で言うと、『その作品で伝えたい “感情” や “考え” “メッセージ” のこと』です。 (※テーマ=主題と捉えても良いと思います。)

たとえば、「こんな気持ちを伝えたい」「こんなことを感じてほしい」「こういうことを考えてもらいたい」、そんな、心の中にある“思い”や“問い”のようなものです。

「作品の心」ともいえるかもしれません。

テーマの例としては、こんなものがあります。

孤独、希望、成長、自然の力、死生観

どれも、目には見えず抽象的で、人の心の深いところにあるような思い、さまざまな概念や観念も含まれます。

絵画の『題材』とは何か

題材を一言で言うと、『テーマを表すために使う“具体的なモチーフやシーン”のこと』です。

つまり、題材は、絵画作品の“見た目”にかかわる“素材”として画面に配置されて描かれます。

(※題材=モチーフと考えても良いと思いますが、モチーフという言葉は、あまりに広い意味に捉えられるので、その点は独自に整理してください。 )

題材の例を挙げてみましょう。

  • 『暗い部屋で窓の外を見る少年』
  • 『大嵐の中に立っている一本の木』

このように通常、題材は目に見えるもので、それぞれに伝えたいテーマがあります。

たとえば、

  • 『暗い部屋で窓の外を見る少年』は孤独がテーマかもしれません。
  • 『大嵐の中に立っている一本の木』は自然の力がテーマかもしれません。

このように描かれた題材から鑑賞者は、テーマを推理しようとします。

ただし、題材が描かれただけで明確なテーマが制作者にない場合もあります。

このテーマと題材の曖昧さは、絵画の良し悪しを決定させてしまうので、次の項目の『テーマと題材の関係』をしっかり理解してほしいと思います。

『テーマ』と『題材』の関係

『テーマ』と『題材』で、よくある間違いは、「題材=テーマ」だと勘違いしてしまうことです。

たとえば花や人物、あるいは風景を描くことを絵画のテーマかのように設定している場合があります。

対象物を設定しているだけでは、そこにはテーマはなく、題材があるにすぎません。

ただ、題材を描くだけでもテーマを感じさせることができるので、テーマがないことに気が付いていない作者は多くいます。

たとえば描いた花が、咲きかけの花や、枯れかけた花だった場合、結果的に、咲きかけの花は成長、枯れかけた花ははかなさといったテーマを感じさせることができます。

しかし、それらは結果的にそうなっただけなので、偶然そのようなテーマができただけにすぎません。

作家もなんとなく、そのように偶然感じられたテーマに無意識に寄り添って作品をつくることになります。

そのためテーマ設定を曖昧にした絵画制作が進行してしまうことになります。

もし、制作者がテーマをしっかり設定して、題材を意識的に選び、物語性などを絵画へ付与することができれば、描かれる絵画は、訴求性のある魅力がある作品に変貌します。

その点から、題材を決めてからテーマを決めるよりも、テーマを決めてから題材を決めた方が、描かれる作品の完成度は高まると考えることができます。

ただし、自分のテーマが分からない、見つからない、という制作者は、描きたい題材を見つけて、エスキースなどを描きながら、テーマを発見して設定するのもよいかもしれません。

少なくとも、テーマと題材を理解し2つの結びつき方をしっかり理解して、作品を制作してください。

そして、対象物を描くとき、何を伝えるのかといったテーマが抜け落ちることがないようにしましょう。

絵画の『スタイル』とは何か

スタイルは、その題材を「どのように描くのか」、つまり絵画の描き方や技法、表現方法全般のことになります。

たとえば、「やわらかい水彩のタッチで描く」「大胆な線と形で抽象的に表現する」「古典的技法で写実的に描く」などテーマに合う視覚的な表現方法が、絵画のスタイルになります。

絵画のスタイルが異なれば、同じ題材を描いても、見る人が受け取る印象は大きく変わります。

通常スタイルは、テーマをいかに伝えるのかを念頭に置いて、さまざまな技法を変化させて開発していきます。

ただ、テーマを意識せず、魅力的なスタイルの開発にこだわることで、結果的に何らかのテーマにたどり着くケースもあるので、臨機応変に、柔軟に、絵画制作に取り組むべきだと思います。

絵画の『テーマ』『題材』『スタイル』のまとめ

最後に、絵画における『テーマ』と『題材』そして『スタイル』の役割について、まとめて終わりたいと思います。

項目 内容 具体例 特徴 役割
テーマ 伝えたい感情・考え・メッセージ ・孤独
・希望
・生と死
目に見えない / 抽象的 / 心に関わる なぜこの絵を描くのかという問いに答える(動機・目的)
題材 テーマを伝えるために選んだモチーフ・構図・場面 ・夜の公園にひとりで座る人
・手をつなぐ親子
目に見える /具体的 /観察できる 何を描くのか(素材・構成)
スタイル 絵画の描き方・技法・表現方法全般 ・やわらかい水彩タッチ
・抽象的な線画
・リアルな写実画
視覚的 / 技術的 / 表現方法の選択 どう描くのか(伝え方・印象)

鑑賞者の心に残る絵画作品を制作するうえでは、自分のテーマを伝えるための最適な題材を選択し、テーマに合う効果的なスタイルで表現する、というように、テーマと題材、スタイルの3つの要素がしっかりつながることが大切です。

このテーマと題材、スタイルの3つの要素のつながりを意識することで、「ただ上手に描かれた絵」から、「心に届く絵」へとレベルアップできます。

2025年4月13日執筆公開

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