図と地から構図を考える
図と地の両方の側面から構図を吟味することで適切にトリミングを行うことができます。また、デッサンに図と地による両義的な側面をもたらすことができます。
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図と地の関係
上の図はルビンの壺と呼ばれている図です。壺と意識することで壺と認識する事が出来ます。しかし、人が向かい合っている図だと思えば、そのようにも見えます。
壺を認識している時、壺を図と呼び、その背景は地と呼ばれます。人が向かい合っていることを認識した時、それが逆転するわけです。
もし、この絵が壺が描かれたものだとしたら、壺を描いたにもかかわらず、人が向かい合ってしまう図も同時に描いてしまったことになります。このように地を意識しないで描いた場合、地に思いもよらない形態が発生します。このように図と地の反転が絵画を損なう場合は、図になる形態の形や大きさを考慮しなければなりません。
デッサンの初心者は、図の形は意識するが、地の形を意識しないで描いている場合が多々あります。
デッサンが上手な人は図の形を追求しながら、地の形の美しさを同時に追求します。
石膏デッサンの図と地
この石膏像モリエールの構図は、よく参考作品などでも見られるごく一般的な構図です。石膏デッサンでは画面の中に石膏像をどのくらいの大きさで納めるかが、作品の良し悪しを左右します。
多くの石膏像のデッサンには定石の構図法が存在します。この理由の一つは、石膏像が持っている全体の美しい形にあるといえます。有名な石膏像自体が美術品ですし、画面から切るところなど本来なら当然ないわけです。
だからといって、画面いっぱい入るだけ入れればいい、という単純な考え方は賛成できません。石膏像のボリュームを感じさせるために画面に入れない部分を作る場合もあります。例えば石膏像の左右どちらかを切ることで石膏像のボリュームや画面の動きが表現できます。もし石膏像のトリミング範囲に迷うときは背景である地の形がどのように画面に影響しているか考えましょう。
しかし、思う通りの角度から石膏デッサンが行えない場合などはどうすればよいでしょうか。例えばアトリエが学生で込み合って、描く場所がなく、真横から描かなければならないなんてこともあります。その時、何を手がかりに構図を探ればいいでしょうか。
手掛かりの一つには、石膏の形である図と、背景の地のバランスを考え、図と地の境界の美しさを追求する事にあります。そのとき図と地の面積のバランスは重要です。あくまでも図である石膏像の美しさを優先させましょう。
地の面積が必要以上に多くとられた場合は、地に対する明確な意図が必要になります。例えば"孤独な石膏像を表現する"とか、"アトリエの陰気くさい雰囲気を伝えるように描こう"とか。"光り輝くような画風にしあげよう"とか、独自の意図が必要になります。