形態の錯覚と錯視効果
形態の錯覚と錯視効果から感じ取れる心理作用や認知的現象を理解すれば、デッサンや絵画の描き方を飛躍的に発展させることができます。
図形の組み合わせによる形態の錯覚と錯視効果
エンビングハウス錯視
中心の図形がその周りにある図形により、大きさが違うように見える錯視です。
エンビングハウス錯視-図形1では、2つの黒い中心の円は、その円に付加付随する周りの図形によって、与える印象を変えます。
2つの黒い円は左上が大きく見えます。双方の中心の円だけを見れば、まったく同じものですが、それを取り巻く図形により、中心にある円の大きさは違うように見えます。
個人的に、左上の中心の黒い円は周りに付加付随した小さな円によって突出しているようにも見え、磁場を感じます。また右下の同じ大きさの円が付随した中心の黒い円円は、黒いことも手伝って埋没しているように見えます。
エンビングハウス錯視-図形2では、三角形で構成されていて、この図形もエンビングハウスのバリエーションと捉えられます。
ジャストロー錯視
ジャストロー錯視-図形1では、同じ大きさの図形が上下に並んでいますが、下のほうが大きく見えます。
これは図形に近接する線が下の図形のほうが長いために、下の図形が大きいと感じられる錯視が起きていると考えられます。
それを裏付けるように、ジャストロー錯視-図形2では上の図形が大きく見えます。これは下の図形より、上の図形のほうが近接する線が長いためです。
ボンゾー錯視
ボンゾー錯視-図では、2つの同じ大きさの形態が先細りに線の影響を受け、左の形態が大きく見える錯視です。
この錯視には、恒常性という原理がはたらいています。
先細る方向へ向かい遠近感が感じられるので、2つの図形が同じものなら、遠近感に沿って小さくなるという心理状態になります。しかし左の図形は遠近感に反して小さくならないので、それを補うように左の図形が大きいからだと認識すると考えられます。
線の組み合わせによる形態の錯覚と錯視効果
オッペル・クント錯視
A,B,Cと等間隔に並んでいますが、AとBとの間に等間隔に9本線を等間隔に並ばせると、AとBとの距離が、BとCとの距離よりも長く感じます。
BとCのような漠然とした距離よりも、AとBのように具体的な手がかりがある方が距離が長く見え、突出して見えます。また、多くの線によって群化されることで立体感があります。
ミュラー・リヤー錯視
同じ長さの線の両端に矢羽を付けると、内向きに付けた場合、線は短く見え(上図),外向きに付けた場合、線は長く見えます(下図)。この時、ボンゾー錯視と同じように恒常性という原理がはたらいています。
ザンダー錯視
2つの平行四辺形がくっついた状態で、長さの等しい対角線が引かれています。
大きい平行四辺形の対角線は、小さい平行四辺形の対角線よりも長く見えます。 この場合も恒常性の原理がはたらいていると考えられます。