デッサン初心者のためのモチーフの選び方
このページでは初心者がデッサン力を向上させるためのモチーフの選択方法を解説します。
このページの目次
YouTube動画『デッサン初心者が描くべきモチーフ』
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初心者にありがちなモチーフ選択の失敗
はじめに初心者にありがちなモチーフ選択の失敗の例を紹介します。
デッサン初心者に多く見られるモチーフ選択の失敗は、自分の描きたいモチーフを選ぶことです。
描きたいものを描くことが一番上達するように思えるのですが、デッサンの習熟度が低い初心者が、ただ単に描きたい情熱だけで描きたいモチーフに向き合っても、思うような絵画を描くことはできません。
はじめは、描きたいモチーフを描くことを少し我慢してデッサンの基本的な能力を高めるためにモチーフを厳選して描いていきましょう。
このページを読めば、デッサンの能力を高めるためのモチーフの選び方が理解できるようになると思うので、ぜひ最後までお付き合いください。
どこでも通用するデッサン力を鍛える
デッサンを学ぶ目的には、写実的な絵画を描きたい、抽象的な絵画を描きたい、マンガを描きたい、イラストを描きたいなど、人それぞれにあると思います。
しかしデッサンを学ぶ目的は違っても、デッサンの基本的な要素は共通しています。
そのため、はじめはデッサンの基本的な要素を学ぶことを目的にしてモチーフを選択し、多くの人が同じようなデッサンを描いていくことが求められます。
その結果、どこでも通用するデッサン力を鍛えることができます。
デッサン力はデッサンの基本的な要素を少しずつ学ぶことで向上するので、この段階ではデッサン力を向上させるための訓練と割り切ってモチーフを描いてください。
それでは、デッサンの基本的な要素とその描き方について考えてみましょう。
デッサン初心者が学ぶべきデッサンの要素と描き方
デッサン初心者がはじめに学ぶべきデッサンの要素と描き方には 1~5のようなものがあります。
学ぶべきデッサンの要素と描き方 | ||
---|---|---|
順番 | 要素(目標) | 描き方 |
1 | 対象の形 | 透視図法を応用した描き方 |
2 | 対象の陰影 | 陰影法による描き方 |
3 | 対象の固有色と質感 | 固有色と質感を意識した描き方 |
4 | 美術解剖学 | 人物の骨や筋肉などの構造を感じさせる描き方 |
5 | 細密描写 | 対象をリアルに感じさせるための描き方 |
1の対象の形では、透視図法を応用して正確にモチーフの形態を描く方法を学びます。
2の対象の陰影では、モチーフの陰影を描くための陰影法を学びます。
3の対象の固有色と質感では、モチーフの固有色と質感の描き方を学びます。
4の美術解剖学では、人体の骨や筋肉などの構造を理解して人物を描く方法を学びます。
5の細密描写では、細密に描くことで生まれる絵画空間について理解し、対象をリアルに感じさせる描き方を学びます。
これらのデッサンの要素と描き方を1~5の順番で学んでいくと、デッサン力は向上しますが、1つ1つクリアすれば終了するわけではありません。
1~5で学ぶことのできる要素は相互にかかわり複雑になるので、常にこれらの要素を学び理解する意識がデッサンや絵画制作では必要です。
また、1~5のサイクルで描いていくと、徐々に対象の形、陰影、固有色、質感は同時に表現できるようになるので、あなたにとって効率の良い描き方を見つけるとよいと思います。
デッサンの要素を理解するためのモチーフ
デッサン初心者が学ぶべきデッサンの要素とそれを表現するための描き方が設定できたので、つぎにこれらを実行し理解するためのモチーフを選択します。
デッサンの要素を理解するためのモチーフを要素別に見ていきましょう。対象の形を理解するためのモチーフ
対象の形を理解するためのモチーフは幾何形体と呼ばれる立方体、直方体、円柱、円錐、四角錐、球体などになります。
透視図法を理解しながら描いていきますが、設計図を描くわけではないので肩の力を抜いて取り組みましょう。
円柱を描けるようになるとほとんどの幾何形体は描けるようになるので必ず描けるようになりましょう。
対象の陰影を理解するためのモチーフ
対象の陰影を理解するためのモチーフは石膏像や白い布、白い紙などになります。
これらのモチーフは白いので、光による陰影を観察して描写するのに適しています。
光はできるだけ一つの方向からあてて、モチーフの陰影の変化を観察してください。
対象の固有色と質感を理解するためのモチーフ
対象の固有色と質感を理解するためのモチーフには、固有色のある果物や柄のある布、光を反射するステンレス製の容器、光を透過する瓶やコップなどがあります。
固有色や質感を理解するときのモチーフには、比較対象になる白いモチーフや異なる素材のモチーフも組み合わせましょう。
異なる色や異なる素材のモチーフがあれば、固有色の違いや質感の違いを描き分ける訓練に役立ちます。
美術解剖学を理解するためのモチーフ
人体を描くときには美術解剖学を理解して描くようにします。
はじめは自分の手をモチーフにして、骨や筋肉の構造を意識しながら描き進める方法を学びます。
そして描く範囲を広げるように段階的に、自画像や人体全身を描いていきます。
細密描写を理解するためのモチーフ
細密描写を習得するにはクルミなどの小さなモチーフを用意します。
細密に描くことで空間が生まれることを体感し、さらに対象をリアルに感じさせる描写方法を学びます。
大きなモチーフを描く場合は、すべてを細密に描くのではなく、細密描写する箇所としない箇所を描き分けましょう。
デッサン初心者のためのモチーフの選び方-まとめ
デッサン初心者のためのモチーフの選び方を簡単にまとめると下記のようになります。
デッサンの要素を理解するためのモチーフ | |||
---|---|---|---|
順番 | 要素(目標) | 描き方 | モチーフ |
1 | 対象の形 | 透視図法を応用した描き方 | 幾何形体(立方体、直方体、円柱など) |
2 | 対象の陰影 | 陰影法による描き方 | 白いモチーフ(石膏像、白い布、白い紙など) |
3 | 対象の固有色と質感 | 固有色と質感を意識した描き方 | 固有色のあるモチーフ、光を反射するモチーフ、光を透過するモチーフ |
4 | 美術解剖学 | 人物の骨や筋肉などの構造を感じさせる描き方 | 手、足、顔、全身像 |
5 | 細密描写 | 対象をリアルに感じさせるための描き方 | クルミ、松ぼっくり、目、鼻、口、靴、パイナップルなど |
初心者の人は、はじめは1~5の順番でデッサンを学んでいくとよいと思います。
1~5を一つ一つクリアするのではなく、1~5をサイクルさせて描いていきましょう。
1~5をサイクルさせて描いていくと、徐々に対象の形、陰影、固有色、質感は同時に表現することができるようになるので、3つくらいのサイクルに圧縮されて、複雑なモチーフが描けるようになります。
次のページからデッサンで学ぶべき基本的な要素を理解してください。
2022年4月1日執筆公開