巨匠が描いた作品からクロッキーを考える
ルネッサンス期の巨匠ミケランジェロとレオナルド・ダ・ヴィンチの作品からクロッキーの可能性を考察しましょう。
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ミケランジェロの作品
《背を向けてひざまずく男性裸体像習作》1540年頃
上図は、現代のクロッキーに近いスタイルの描き方が想像できます。人体を構成する筋肉やその下にある骨格までも感じさせ、人体の本質を知らなければ描けない実力のある素描であることが分かります。
《リビアの巫女のための習作》1511年頃
この素描はバチカン宮殿のシスティーナ礼拝堂の天井画に描かれている女性預言者リビアの巫女(下図)の習作です。この習作は男性をモデルにしていて、女性を想定して描いているにもかかわらず、筋骨隆々で男性的です。これはミケランジェロの特徴で男性も女性も同じように筋骨隆々に力強く描かれます。
この素描から分かるように人体を描く上で筋肉と骨格を理解することは重要です。クロッキーにおいても人体がどのような動きをして、筋肉が隆起しているのかなどを研究しなければ人を魅了する作品は描けません。
レオナルド・ダ・ヴィンチの作品
《人体解剖図》
人体解剖図はレオナルド・ダ・ヴィンチが残した資料の一つです。このような図を見ると絵描きが単に視覚的に見える人体の表面だけを描くのではないことが理解できると思います。このような筋肉や骨格を絵画に反映させるための研究は奥が深いものです。この時代、人体というものを客観的にするために、図鑑を作る意識は強かったと想像できます。
《馬の臀部と後肢の6つの習作》1508年頃
この時代、動物や人間などの動きを伴うものに関する資料の作成は特に重要な仕事だったはずです。現代のように写真もない時代ですから、早く描くことに長けた人は貴重な存在だったでしょう。