絵画を活き活きさせる描き方
平板でつまらない絵画の問題点は絵画制作での意識にあります。思うような絵が描けない人は、このページを参考にすぐに絵画制作の意識を変えてみてください。
このページの目次
平板でつまらない絵画に見られる改善点
平板で見ていてつまらない絵画にはいくつかの傾向、改善点があります。それらをいくつか取り上げてみました。
- 線の太さが均一である
- 明暗のコントラストが曖昧で明快でない
- 絵画全体の遠近感の意識が感じられない
- モチーフの手前と奥を意識して描いていない
- 背後のモチーフをあいまいに描いている
- 構図で図と地を意識していない
- モチーフの色を塗り絵のように塗り潰している
以上のような絵画に見られる改善点は、制作意識を変化させるだけで、すぐに改善できます。
つぎに、それぞれの絵画に見られる改善点を解説してみたいと思います。
絵画の改善点と改善方法
線の太さが均一である
デッサンを描くときモチーフの輪郭を均一の太さでなぞるように描いた場合、印刷で引いたような平板で動きが感じられない線になるので、線に抑揚をつけるようにして描いてみるとよいと思います。
線の太さが均一である要因には、線を描くときに強弱をつけないことや、線を描くときスピードに変化をつけないことがあげられます。
線に強弱をつければ、強い線は手前に感じられ、弱い線は奥に感じられるなど画面に変化を与えられます。
線を描くときのスピードでは、速く描写すれば線を描いた方向に動きを感じさせることができるので、遅く描いた線と組み合わせれば、線によってさまざまな動きを感じさせることができます。
それらをうまく使いこなせれば均一な線の太さも改善されます。
クロッキーは線について理解が深まるのでおススメです。
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明暗のコントラストが曖昧で明快でない
明暗のコントラストは描かれた絵画全体を見たときの明暗のバランスです。
絵画から感じられる明暗のコントラストは、絵画を鑑賞するときの第一印象になる重要な要素なので、その点を意識して描く必要があります。
明暗のコントラストの設定をあいまいにして描かれた絵画はインパクトがないので必ず意識しなければなりません。
絵画を描くときの明暗のコントラストにはさまざまな傾向がありますが、絵画を学び始めた人は白から黒まで幅の広いコントラストで描くようにしましょう。
そうすることで明度による明暗のコントラストの要素が理解できるので、その後に、自分なりのコントラストを考えるとよいと思います。
多くの著名な画家は白から黒の幅の広いハイコントラストで描かれる傾向があります。
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絵画全体の遠近感の意識が感じられない
絵画からメリハリが感じられない要因として、絵画全体の遠近感の意識が薄いことがあげられます。
特に具象絵画を描くときは、近景、中景、遠景を設定して描くようにします。
この時の前景のモチーフと遠景のモチーフを設定すれば、自動的に中景のモチーフが設定できるので、簡単に描き分けることができると思います。
そして近景、中景、遠景が描き分けられていきますが、この描き分け方にはさまざまにあります。
遠景を描いてから近景を描く人がいれば、近景を描いてから遠景を描く人もいます。
個人的には、全体の明暗のベースができたら、近景を描きながら、遠景を描く描き方をおススメします。
描画材によっても描き方は違うと思うので、自分なりに近景、中景、遠景を描き分けられるようにしましょう。
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モチーフの手前と奥を意識して描いていない
モチーフの手前と奥を意識して描いていない場合、描かれた対象は平板になり、支離滅裂な画面になってしまいます。
また、モチーフの手前はしっかり描くのに、奥になるにしたがって弱く描く人がいますが、しっかり手前と奥を描き分けてモチーフの存在感を表現してください。
モチーフの手前と奥を意識して描く方法はさまざまですが、手前側と奥側、あるいは始まりと終わりを意識して描くことでモチーフに存在感を与えることができます。
中間部分は対象の手前と奥を上手くつなげることで、中間の描写を省略して描くこともできるかもしれません。
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背後のモチーフをあいまいに描いている
遠くにあるモチーフ(対象)を描くとき、手前のモチーフよりもぼかして曖昧に描く表現方法がありますが、単にぼかすような描き方は、絵の強さが失われるので、気を付けなければなりません。
とはいえ、ぼかすように曖昧にすることが必ずしも悪いことではありません。
写実絵画にはスフマートというぼかし技法があります。
スフマートは、対象の境界をぼかすことで、形態を柔らかく浮かび上がらせたり周囲に溶かし込んだりする技法です。
この技法を絵画画面に与えることで、リアルな空間と質感が表現できるのですが、この技法を使いこなすのは簡単ではありません。
この技法を利用するための前提として、正確に対象が表現されている必要があります。
そして正確にしっかり描かれた箇所をぼかすことでスフマートが機能するので、ただ単に曖昧に描かれた絵画とは違う表現になります。
そのため背後にあるモチーフはしっかり描いてから、絵画全体のバランスを見て、弱めるべき個所を弱めるようにするべきでしょう。
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構図で図と地を意識していない
図とはモチーフ(対象)のことで、その背後を地と呼びます。
構図が悪い人の多くは、図であるモチーフだけを意識して、その背後の地を意識していないことにあります。
その結果、大きな画面に小さく対象が描かれ、広い余白が残ったり、画面よりも対象を大きく描きすぎて、すべてが入りきらなくなったりすることがあります。
その構図の欠点を改善するには、対象である図だけでなく、その背後の地の形や大きさを意識するようにします。
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モチーフの色を塗り絵のように塗り潰している
絵を描くとき、塗り絵のように塗り潰して対象の明度を表現する人がいますが、その意識は絵画を描く意識としてはおススメできません。
絵画制作の初期段階で、明暗のベースをのせるために塗り絵のように描くのは問題ないのですが、モチーフ(対象)を描くときは、固有色や明度だけでなく、質感やモチーフの向き、奥行きなども意識して表現する必要があります。
そのように意識的に描くことで次第に線や面の端部の表現に変化が生じてくるので、モチーフを描くときは明度だけでなく様々な要素を意識するようにしましょう。
絵画制作で塗るという意識は、表現されたものを消す作業にあたるので、塗る場合は目的を明確にするべきだと思います。
たとえば、マンガ製作などでのベタ塗では、虚と実を表現した一場面が描かれたりします。
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2023年1月26日執筆公開