シュールレアリスム-無意識と深層心理
西洋絵画の歴史・美術史|芸術と絵画史
シュールレアリスムの主な人物
時代
シュルレアリスムが芸術運動として始まるのはアンドレ・ブルトンのシュルレアリスム宣言が発せられた1924年です。
主な場所
フランス
主な人物
- サルバドール・ダリ(1904年5月11日 - 1989年1月23日)
- マックス・エルンスト(1891年4月2日 - 1976年4月1日)
- ルネ・フランソワ・ギスラン・マグリット (1898年11月21日 -1967年8月15日)
- イヴ・タンギー(1900年1月5日 - 1955年1月15日)
- ポール・デルヴォー(1897年9月23日 - 1994年7月20日)
- エドガル・カール・アルフォンス・エンデ(1901年2月23日 - 1965年12月27日)
- ジョアン・ミロ(1893年4月20日 - 1983年12月25日)
シュールレアリスムの絵画の特色と様式
シュールレアリスム的な表現は、ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)の作品に見ることができますが、彼の絵は形而上絵画などと呼ばれています。
「シュールレアリスム」は、1924年に詩人アンドレ・ブルトン(1896-1966)が発表した「シュールレアリスム宣言」から始まります。
シュールレアリスムの定義には「シュールレアリスムとは理性による支配をまったく受けず、あらゆる美学や道徳的先入観の外側で記述された思考である」といったことが記されています。
シュールレアリスムは、既成の美の観念を否定するダダイズムの運動の後を受け継ぐように新しい美学を提唱しました。
ダダイズムによって、既成の権威が破壊されていく中、芸術の探求領域はシュールレアリスムによる"無意識"の世界にすすむことになります。
シュールレアリスムにとって無意識の学説を提唱したフロイトの"深層心理学"の影響は大きいものでした。
シュールレアリストたちの深層心理、無意識の世界を具現化する手法は、夢の中で見た映像を絵にしてみたり、偶然見えた形態を積極的に作品に取り入れてみたり、様々に生み出されていきました。
その手法の根本には、意識下、無意識の世界をどのように引き出すかが重要なポイントで、多くはダダイズムから引き継いでいます。
下記に記したのがシュールレアリストたちが使用した有名な手法です。
シュールレアリスムの主な手法
- オートマティスム
- 自動記述といわれるもので、美的基準、倫理基準を用いないで思ったままを純粋に心の動きそのままを記述していく方法です。のちに、抽象表現主義(アブストラクト・エクスプレッショニズム)へと伝わります。
- デペイズマン
- 違和効果といわれるもので、別の文脈にあるもの同士を引き出し、新たな文脈に置くことで意味の変容をはかります。まったく無関係と思われるもの同士を組み合わせて独特の世界を作り上げ、思いもよらない奇妙な効果、詩的な効果を追求していく方法です。
- フロッタージュ
- マックス・エルンストによる作品で多く使われた手法です。木目などに紙をのせ鉛筆などで擦り出してイメージを引き出します。
- デカルコマニー
- 紙などにインク、絵具などをランダムにのせ、それを何かに押し付けて偶然できる形、色を使ってイメージを引き出していく手法です。
- コラージュ
- 平面上に紙片や物体をのせ、イメージを引き出していく方法です。
- フォトモンタージュ
- 複数のイメージの合成写真です。平面上に写真の切れ端をのせていくコラージュでもあります。
- トロンプ・ルイユ
- フランス語で「眼を騙す」を意味し、騙し絵のことを指します。今日では「トリックアート」とも呼ばれます。
- 優美な屍骸
- 一つの文章、詩、絵画などを制作する際に、複数の人間がパート別に制作する手法です。互いに他の人間がどのようなものを制作しているかを知ることなしに自分のパートだけを制作していきます。
シュールレアリスム絵画の様式の変遷
1920年代にシュールレアリスムの絵画は大きく2つの様式に分かれていきます。
第1の様式は、サルバドール・ダリ(上図:ダリ画集)などに見られる厳密な写実的手法による不条理性の表現、または幻想的、幻覚的な世界のイメージです。
この様式は、現代でも多くの人が身近に感じていて、様々な広告、映像などにも取り入れられています。
第2の様式は、ジョアン・ミロ(上図:ミロ画集)などによるもので、オートマティスムの手法を使った感情的、感覚的な世界の抽象的なイメージです。
この様式は抽象的な表現に影響を与えました。