初期ルネサンス-古代復興と絵画
西洋絵画の歴史・美術史|芸術と絵画史
初期ルネサンスの時代と主な人物
時代
15世紀初頭
主な場所
イタリアのフィレンツェ
主な人物
- フィリッポ・ブルネレスキ(1377-1446)
- マサッチオ(1401-1428)
- アルベルティ(1404-1472)
- サンドロ・ボッティチェッリ(1445-1510)
※ここでは、初期ルネサンスにおける一部の絵画の動向にかかわる人物について取り上げます。
初期ルネサンスの絵画の特色と様式
イタリア15世紀初頭の初期ルネサンスの人々は古代ギリシャ・ローマ文化が再発見されると、古代ギリシャ・ローマ時代を理想と考えるようになり、人間中心で自然主義的な価値観が高まります。とはいえ、神を否定することはありませんでした(ルネサンスはフランス語で再生を意味します)。
古代復興、再生を理想に掲げるようになると、ものの見方や価値観に変化が起こり、アーティストは現実世界、人間、自然をリアルに写し取るようになります。その結果、写実的な絵画を描く手法が顕著に展開します。
初期ルネサンスのアーティストの特徴
フィリッポ・ブルネレスキ(1377-1446)
透視図法(線遠近法)を最初に発見した金細工師、彫刻家、建築家です。ブルネレスキが最初に透視図法を会得したと考えられています。
マサッチオ(1401-1428)
平面の絵画に現実世界のリアルな臨場感を再現させるために、透視図法と明暗法(キアロスクーロ)を利用して絵画を描いた画家です。代表作である『聖三位一体』は、ブルネレスキから透視図法を教わって制作されたと考えられています。絵画を透視図法で描いた最初の画家の一人として知られています。
マサッチオ『聖三位一体』1425年と1428年の間[フレスコ画,667cm×317cm,サンタ・マリーア・ノヴェッラ聖堂(フィレンツェ)]
アルベルティ(1404-1472)
ルネサンス期に理想とされた万能人の最初の人物で、人文主義者で建築家です。
彼が著した『絵画論』はとても重要でレオナルド・ダ・ヴィンチにも影響を与えています。この著書では線遠近法が理論化されるとともに、歴史画の概念が提示されます。
画家の使命は優れた歴史画を描くことであると提言し、歴史画は複数の人物像の組み合わせによって物語が描かれ、画面に生命感を与えるための多様性など創意工夫が必要であると説きます。
サンドロ・ボッティチェッリ(1445-1510)
メディチ家に保護され、宗教画や神話画などの傑作を描いた画家です。透視図法や明暗法によって描かれた絵画は、ルネサンス的な自然主義、科学主義からはずれ、キリスト教やギリシャ・ローマ神話へ傾倒していきました。代表作『プリマヴェーラ(春)』『ヴィーナスの誕生』
ボッティチェッリ『プリマヴェーラ(春)』1477-1478[パネルにテンペラ,203cm×314cm,ウフィツィ美術館(フィレンツェ)]
ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』1485年頃[キャンバスにテンペラ,172.5cm×278.5cm,ウフィツィ美術館]
テンペラ絵の具で描かれたボッティチェッリの絵画は、学生がテンペラ技法を学ぶためのお手本になっています。
初期ルネサンスの特徴的な絵画技法
ブルネレスキによって発見された透視図法は、マサッチオによって絵画制作に活かされるとともに、アルベルティの『絵画論』によって理論化され、写実的な絵画を描くうえで欠くことができない造形の要素となります。
この透視図法で配置された対象が明暗法で描かれることで絵画はよりリアルになりました。
絵画は3次元の世界をリアルに再現できるようになることで、盛期ルネサンスでは更に絵画のイリュージョンを実現させるスフマートや空気遠近法の効果が発揮されるようになります。
初期ルネサンスの絵画様式のその後
初期ルネサンスは、16世紀初頭の盛期ルネサンスへ継承されて、写実的な絵画がより洗練されます。
盛期ルネサンスで活躍するアーティストには、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)、ミケランジェロ・ブオナロティ(1475-1564)、ラファエロ・サンツィオ(1483-1520)の三大巨匠がいます。
参考文献
- 『カラー版 西洋美術史』美術出版社,1990年
- 『巨匠に教わる絵画の見方』視覚デザイン研究所編,1996年
- 『西洋美術史』武蔵野美術大学出版局,2006年