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松井冬子-世界中の子と友達になれる

芸術と絵画史|デッサンと言う礎

松井冬子の展覧会"世界中の子と友達になれる"を鑑賞して…

松井冬子展-世界中の子と友達になれる-チケット

2012年2月に、松井冬子氏(以下、敬称略)の展覧会へ行ってきました。私は松井冬子の絵画を見るのは初めてで、この人のことは多くは知りませんでした。

故・筑紫哲也さんのNEWS23で一度見たことがあると思いますが、ほとんど記憶にありませんでした。

そんな時に友人と出かけることがあり、この展覧会場で待ち合わせることにしたのが、松井冬子の絵を知るきっかけです。

家を出る前に軽くパソコンで松井冬子の展覧会について検索をすると、鑑賞した人の多くが『かなりグロテスクだった…』だとか『最初は気持ち悪かったが、次第に共感できる部分が出てきた』など、かなり面白い感想が出てきたので楽しく見れるかもと期待しました。

会場に訪れ、まったく松井冬子の絵画を見たことがない私は、日本画家であることを知り、その写実的に描かれた作品は確かに気持ちはいいものではないなぁと思いました。

グロテスクかどうかでいえば、グロテスクというよりも標本や図鑑みたいだなぁと思いました。わざとらしさが感じられないと言い換えられるかもしれません。

今回余り時間がないので、どんな風に鑑賞しようかと考えていました。そこで、松井冬子がなぜこのような絵を描くのか?はあまり考えずに、何故このような個展を横浜美術館は開催したのかを考えながら鑑賞することに決め、歩を進めました。

一緒にいた連れは淡々と鑑賞しているようでしたが特に会話をすることもなく、それぞれ鑑賞していました。

"確か、横浜美術館はシュールレアリスムの作品を多く収集する美術館だから、その流れの中でこの作家に注目したのだろうか?"とか、"情報社会の営みの中で人間一人ひとりの意識がさまざまな方向へ拡散している。その意識を一度自分自身の中に引き戻す必要性を社会が希求していて、その役割が松井冬子の絵画へつながっているのだろうか?"だとか、勝手な思いを巡らせました。

見ていくと松井冬子の作風に関しては"人間の肉体やさまざまな生物をあつかって表現する松井冬子の画風は、インパクトのある痛みや鑑賞者の記憶を想起させて、その結果、鑑賞者を自分自身へと回帰させる気がする"、"この絵画は痛みを表現しているけれども、その痛点(痛み)を鑑賞者それぞれに委ねているのだろうか?だとすれば、鑑賞者のトラウマや深層意識に眠っている負の経験を呼び起こそうとする作用があるこれらの絵画は怖いし、それに伴い現代社会が松井冬子という画家に過剰なまでに注目しているとすれば異様なことだろう"などという感想が起こりました。

時間もあまりなく約1時間ほどで美術館を後にしましたが、正直、最低2時間は鑑賞したい展覧会でした。

あと残念だったのは平日の閉館間近にいったことです。それは、週末の昼前後に来てみて、この会場に来ている人を見てみたかったと思ったからです。

そうそう、これは記憶違いかもしれないですが、会場の最後の方に『既成概念を壊さなければならない』といった内容の松井冬子の文章があったと思います。その文章に感銘を受け納得して帰ったと記憶しています。現代美術家らしい言葉で相応しいと思ったからです。

最後に、松井冬子が生と死の境界にある痛みを表現していることでは、生と死を想い熟慮し制作されていることがわかります。

当サイトで先に紹介している野田弘志氏、諏訪敦氏と共感共鳴されていることを感じずにはいられません。御三方が皆、リアリズム絵画であることも興味深いです。

※2012年3月28日執筆

松井冬子 画集

松井冬子画集 世界中の子と友達になれる (エーテー・アートブック) [大型本]
松井冬子画集 世界中の子と友達になれる (エーテー・アートブック) [大型本]

内容紹介
松井冬子展(横浜美術館)公式カタログの書籍化。新作を含め本画、下図、コラージュ等107点収録。松井作品のエッセンスを集約。その魅力をエッセイ群によって余すことなく紹介。

松井冬子画集 世界中の子と友達になれる (エーテー・アートブック) [大型本] -詳細はこちら…amazon.co.jp で詳細を見る

増補改訂版 松井冬子 二 MATSUI FUYUKO II
増補改訂版 松井冬子 二 MATSUI FUYUKO II

内容紹介
個展『Narcissus』出品作とそれ以降の最新作(2007 2008年)に、本画・部分図・下図、自作解説を収録。後の「浄相の持続」を想起させる野心的習作群等を追加した増補版。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
松井 冬子
1974静岡県森町出身。1994女子美術短期大学造形科絵画専攻卒業。2002東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。2004東京藝術大学大学院 美術研究科修士課程日本画専攻修了。2007東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画研究領域修了。博士号(美術)取得。博士論文「知覚 神経としての視覚によって覚醒される痛覚の不可避」。受賞歴、2006佐藤美術館奨学生優秀賞受賞。2007東京藝術大学卒業修了制作野村美術賞受賞(本 データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

増補改訂版 松井冬子 二 MATSUI FUYUKO II-詳細はこちら…amazon.co.jp で詳細を見る

痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~ [DVD]
痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~ [DVD]

内容紹介
美術界を超えて大きな脚光を浴びている画家・松井冬子が追及する「美」の本質に多角的に迫る!

伝統的な日本画の手法で、内臓やはがれた皮膚など一見痛々しくも見えるモチーフを描き、美術界やメディアに大きな衝撃を与えた画家・松井冬子(34)。 女性で東京芸術大学史上初の日本画専攻の博士号を取得し、若い女性を中心に大きな支持を集める新進気鋭の画家である。今年発売された初の画集は、美術書としては異例の売れ行きを記録、発売記念サイン会には多くのファンが集まった。松井はなぜ見るものに「痛み」を感じさせる作品を描くのか、彼女の作品がなぜ強い訴求力を持ち、支持されるのか――。 松井冬子の創作現場に初めて密着取材を敢行、「痛みが美」へと変貌する秘密を探る。

出演:松井冬子(画家)、上野千鶴子(東京大学大学院社会学部教授)、山下裕二(明治学院大学文学部教授)、布施英利(東京芸術大学美術学部准教授) 語り:吉行和子(俳優) ○2008年4月20日 NHK教育テレビ「ETV特集」で放送 〔特典映像〕未放送映像から、アトリエでの作品制作風景やインタビューなどを収録!(25分) ☆「痛み」を感じさせる一見グロテスクとも言える作品の魅力のみならず、松井冬子の美貌にも大注目!!

痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~ [DVD]-詳細はこちら…amazon.co.jp で詳細を見る

松井冬子氏の紹介サイト

松井冬子/まついふゆこ/Fuyuko MATSUI…松井冬子 氏のホームページ

ETV特集「痛みが美に変わるとき〜画家・松井冬子の世界〜」 痛みが美に変わる時~画家・松井冬子の世界~ [DVD] として現在販売されている。

「理性ある狂気」で描く心の風景 松井冬子インタビュー …CINRA.NET2011年12月2日掲載。

松井冬子 - Wikipedia…ウィキペディアのよる松井冬子 氏の情報

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