デッサンと言う礎

構図とモチーフの配置

構図の上下左右は基本的な心理的作用があります。構図を構築させるための基本的なモチーフの配置方法を理解しましょう。

絵画画面を見たときの基本的な心理作用

絵画画面の上下左右を見たときに感じる心理作用には諸説あります。ここではよく知られている構図の心理的作用のいくつかを紹介したいと思います。

構図の基本となる上下左右

画面の上下では上が遠くて軽く感じられ、下が近くて重く感じられます。左右では右が物事の起点とされ、左が終点と意識される傾向があります。

構図の基本となる上下左右
構図の基本となる上下左右

これらが関係する画面を4等分すれば、右下が一番重く左上が一番軽く感じられる傾向があり、1~4の順番に右下から左上へ向けた動きが生まれます。

構図の上下左右の動き
構図の上下左右の動き

以上は絵画の構図の上下左右に見られる心理的作用です。これらを利用すれば描き進めやすい絵画の構図を構築することができます。また、これらのセオリーを逆手に取った構図を考えることもできると思います。

構図の左右におけるモチーフの配置

モチーフを配置するとき、画面の左右を意識する必要があります。

はじめはモチーフと背景との関係(図と地の関係)が画面の左右に、どのような作用があるか検証してみましょう。

正面を向く人物を中央に配置する

下図のように正面を向いた人物を中央に配置した場合、画面は左右対称で安定的です。自画像の構図によく見られる人物の配置だと思います。

アルブレヒト・デューラー《自画像》1500年
アルブレヒト・デューラー《自画像》1500年

左方向を向く人物を配置する

左方向に視線を向ける人物を中央、左、右にそれぞれ配置した構図について考えてみましょう。下図の人物は左を向いていると意識して見てください。

・中央に配置する

人物を中央に配置することは、アルブレヒト・デューラーの《自画像》と同様に安定的です。ただ、人物の左方向への視線の先が意識されると、安定的な人物の配置に違和感を与えます。

視線の動きを吸収して構図全体のバランスをとるために、人物を左右に動かすことで背景との関係を調整してみたいと思います。

人物を中央に配置した構図
中央に配置した構図

・右側に配置する

人物を右側に寄せて配置することで、人物の左側の背景が大きく広がり、右側の背景が狭まっています。

この背景の面積比に着目すると左から右へ向けた動きを感じることができます。視線による右から左に向かう動きに対して、背景は左から右へ向けた動きがあります。この結果、中央に配置されていたときの視線と背景、人物が関係した違和感は解消されたように感じます。

あなたはどのように感じますか?

前方が広い構図は運動感が強くなり、未来を感じさせる表現に適していると考えられています。

人物を右側に配置した構図
右側に配置した構図

・左側に配置する

人物を左に配置してみます。先ほどの右側の配置とは逆で、背景は人物を境として、右が大きく広がり、左が狭まります。

この結果、背景に着目すると面積比の大きな右から左に向かう動きを感じることができます。

さらに視線も右から左へ向かった動きを感じることができるので、左方向へ強い意識が向けられるようになります。

結果的に画面を超越した左方向への広がりを感じることができます。そして、左方向への意識が向けられる反動のように人物の右側に広がる背景に意識が向かいます。

このような前方が狭まった構図は寂寥感、不安、余韻のある叙情性が表現されると考えられています。

人物を左側に配置した構図
左側に配置した構図

このように人物のような構成物の配置は左側よりも右側に配置したほうが安定的で心地よいとされる傾向があります。安定感や心地よさを基準にすることで、自分のテーマに合わせた絵画の構図を構築するとよいと思います。

左右どちらかを向く人物の配置

人物を配置する場合、人物の体の向きや視線は構図を考えるうえでとても重要です。 この時、方向性のある動きは左から右へ向かうよりも、右から左へ向かう方が安定的で心地よいとする説があります(諸説あり)。

下の絵画は1498年に描かれたアルブレヒト・デューラーの《自画像》です。左向きのものと右向きのものを掲載しました。片方が本物なのですが、あなたはどちらが本物の作品だと思いますか?

アルブレヒト・デューラー《自画像》1498年-左右反転

アルブレヒト・デューラー《自画像》1498年
アルブレヒト・デューラー《自画像》1498年

絵画を見たときの安定感や心地よさだけに着目した場合、私は上にある絵画が本物だと思いました。しかし、本物の絵画は下の方になります。

あなたはデューラーがなぜ右向きの構図で自画像を描いたと思いますか?

構図の上下におけるモチーフの配置

モチーフを配置するとき、画面の上下も左右同様に意識する必要があります。

リンゴを配置する

ここではリンゴを中央、上、下にそれぞれ配置した構図について考えてみましょう。下図のリンゴは画面中央に配置されています。

・中央に配置する

上下に生まれる背景の広さを意識するだけでなく、リンゴの重心も意識しながら、中央にリンゴを配置しました。

モチーフの上下にできる背景の余白の広さも重要ですが、モチーフが持っている重心も意識したバランスを画面に与えるようにしましょう。

この中央に配置されたリンゴを見て構図としてのバランスをあなたはどのように思いますか?

私は安定感がないと思うので、安定感を与えるために少し下へずらす必要があると思います。

それではリンゴを下に動かすと、どのような感じになるか検証してみましょう。

リンゴを中央に配置した構図
中央に配置した構図

・下側に配置する

先ほどのリンゴを下にずらして配置してみます。背景はリンゴを境として、上が大きく広がり、下が狭まります。

この結果、背景に着目すると面積比の大きな上から下に向かう動きを感じることができます。

さらにリンゴの重心も下へ移動するので、安定感のあるリンゴの配置として見ることができます。

次に上側へ配置した場合も検証してみましょう。

リンゴを下側に配置した構図
下側に配置した構図

・上側に配置する

リンゴを上側に寄せて配置するとリンゴの下側の背景が大きく広がり、上側の背景が狭まります。

この背景の面積比に着目すると下から上へ向けた動きを感じることができます。リンゴの重心が上にあるので、浮遊感も感じることができます。

あなたはどのように感じますか?

リンゴを上側に配置した構図
上側に配置した構図

このように上下におけるモチーフの配置の検証から、モチーフ自体が持つ重心やモチーフと背景との関係が重要であることが分かります。

上下左右を意識した構図のまとめ

以上のように構図の基本ともされる上下左右に意識を向けて簡単にモチーフの配置を検証しました。

モチーフの安定感や見栄えの心地よさに意識を向けて検証しましたが、当然ながら絵画は安定感や心地よさだけを追求するものではありません。

制作者はそれぞれのテーマや意図、表現に向けて構図を構築しているので、美しさや心地よさだけではなく醜さや緊張感、不安定感が表現される場合もあります。

2020年11月23日加筆

2020年11月22日執筆

デッサン描き方と基礎技法-目次