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バロック - バロック絵画の偉大な画家たち

西洋絵画の歴史・美術史|芸術と絵画史

バロックの時代と主な画家

時代

17世紀(1580年~1680年頃)

主な場所

イタリア、フランドル(南ネーデルランド)、オランダ(北ネーデルランド)、スペイン、フランス

イタリアのローマが西欧美術の中心地でバロックの起点です。バロックはこの地から他の国々へ広がっていきます。

主な画家

イタリア

  • アンニーバレ・カラッチ(1560-1609)
  • カラヴァッジョ(1571-1610)
  • この二人がイタリアで活躍した時期を初期バロックと呼ぶことがあります。

フランドル(南ネーデルランド)

  • ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)

オランダ(北ネーデルランド)

  • レンブラント・ファン・レイン(1606-1669)
  • フェルメール(1632-1675)

スペイン

  • ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)

フランス

  • ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)

※ここでは、バロックにおける一部の絵画の動向にかかわる人物について取り上げます。

バロックの絵画の特色と様式

初期バロックの絵画では、ルネサンス時代に尊重された均衡や比例の規則が失われる傾向がありますが、基本的に盛期ルネサンス美術を受け継いで展開されます。

ルネサンスに見られた現実世界への関心が一層強まると、様式や主題は現実的になり、宗教画や神話画においても、日常を感じさせる現実的な表現で描かれるようになります。

風俗画、風景画、静物画などの現実世界に密着した絵画ジャンルが生まれ、絵画の世界と現実世界の境界を取り払おうとするイリュージョナルな絵画表現が強くなるのも特色です。

バロック美術の傾向と地域

17世紀の美術全体をバロック美術とくくることがありますが、初期バロックが西欧各国へ広がりを見せる中で、絵画の特色や様式は、それぞれの地域で多少の違いがあります。

バロックはイタリアから起こりますが、そこから顕著に西欧各国へ強い影響を与たのがカラヴァッジョ(1571-1610)の絵画の手法や様式です。

その点に着目しつつバロック美術の傾向を探ると面白いかもしれません。

バロックの意味の変遷

「バロック」という語は「歪んだ真珠」を意味するポルトガル語の「barocco(バロッコ)」に由来するといわれていますが諸説あります。

18世紀後半のフランスの古典主義の芸術理論家には、非古典主義的な建築を「不規則な」様式、「奇妙な」様式、といった批判的な意味で「バロック」は使用されました。

19世紀なかばには批判的な意味はなくなり、美術史や文学史における一時代様式を指すようになります。

美術史では1580年から1680年ころまでのルネサンスとロココの間で展開した西欧美術にあたります。

イタリア・バロックの画家の特徴

アンニーバレ・カラッチ(1560-1609)

アンニーバレ・カラッチは兄アゴスティーノ・カラッチ(1557-1602)や従兄ルドヴィゴ(1555-1619)とともにボローニャにアカデミア(画塾)を設立し、古代および盛期ルネサンス美術と、自然の事物や解剖学的知識に基づいた人体の素描という現実観察を結び付けた古典主義的な教育を目指しました。

アカデミアの中で最も優秀な画家がアンニーバレ・カラッチです。ティントレットやミケランジェロ、ラファエロなどの絵画を学び、古典主義の理想を実現することを使命としました。代表作『バッカスとアリアドネの勝利』など多数 。

アンニーバレ・カラッチ『バッカスとアリアドネの勝利』
アンニーバレ・カラッチ『バッカスとアリアドネの勝利』1597-1600年
[天井画,部分,ファルネーゼ宮殿(ローマ)]

カラッチの代表作である祭壇画『バッカスとアリアドネの勝利』は、古典主義の規範と壮麗さを兼ね備えたルネサンスからバロックへの移行期の代表作で、荘厳で感情に働きかけるような宗教画を求めていた反宗教改革期のカトリック教会の支持を得ました。

この祭壇画の人体表現では、ミケランジェロや古代彫刻の影響を感じさせながら、人物の豊かな表情や動感に新しい表現を認めることができます。

カラヴァッジョ(1571-1610)

カラヴァッジョの絵画は、コントラストの強い明暗対比と緊張感のある構図で写実的に描かれます。代表作『果物籠』『聖マタイの召命』『エマオの晩餐』など多数。

彼のリアリズムにおいては、宗教画で描かれる聖人などは理想的に描かれず、日常的な人物の姿で描かれます。

写実的な表現描写や劇的な明暗対比が特徴的なカラヴァッジョの様式は、17世紀の西欧絵画全体に影響を及ぼし、多くの追随者(カラヴァジェスキ)を生み出しました。

カラヴァッジョ『果物籠』
カラヴァッジョ『果物籠』1595-1596年
[キャンバスに油彩,31cm×47cm,アンブロジアーナ絵画館(ミラノ)]

カラヴァッジョ『聖マタイの召命』
カラヴァッジョ『聖マタイの召命』1599-1600年
[キャンバスに油彩,322cm×340cm,サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会コンタレッリ礼拝堂(ローマ)]

カラヴァッジョ『エマオの晩餐』
カラヴァッジョ『エマオの晩餐』1601年
[キャンバスに油彩,141cm×196.2cm,ロンドン・ナショナル・ギャラリー]

フランドル・バロックの画家の特徴

ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)

ルーベンスはイタリアで盛期ルネサンスのレオナルド・ダヴィンチやミケランジェロ、ティツィアーノ、同時代のカラヴァッジョ、アンニーバレ・カラッチを研究しました。代表作『キリストの昇架』『最後の審判』『レオキッポスの娘たちの誘拐』など多数。

彼が描く群像表現は、立体感を出すための明暗法による陰影だけに頼らない華麗な色彩や柔らかな筆致による質感が特徴的です。

宗教画や神話画だけでなく、肖像画、風景画など多くの分野で活躍したルーベンスは、大きな工房を持ち、多くの画家たちを雇って分業化して作品を制作しています。

ルーベンス『レオキッポスの娘たちの誘拐』
ルーベンス『レオキッポスの娘たちの誘拐』1617年
[キャンバスに油彩,224cm×211cm,アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン)]

オランダ・バロックの画家の特徴

レンブラント・ファン・レイン(1606-1669)

オランダ美術界の巨匠で、集団肖像画の評価が高く、多くの自画像を描いた画家として知られています。代表作『トゥルプ博士の解剖学講義』『夜警』『自画像』など多数。

絵画はカラヴァッジョのようなコントラストの強い明暗表現や劇的な構成手法が感じられますが、光と影を巧みにコントロールする画面構成には、カラヴァッジョにはないレンブラント独特の均衡が認められます。

また、レンブラントは厚く盛り上がるほどの絵の具を使うことで、薄塗では表現できない動感と生命力を写実的な絵画に与えています。

写実的な絵画で画肌の意識が強まるのはバロックの大きな特徴でレンブラントはその象徴的な画家です。

レンブラント『トゥルプ博士の解剖学講義』
レンブラント『トゥルプ博士の解剖学講義』1632年
[キャンバスに油彩,169.5cm×216.5cm, マウリッツハイス美術館]

レンブラント『夜警』
レンブラント『夜警』1642年
[キャンバスに油彩,363 cm×437 cm,アムステルダム国立美術館]

フェルメール(1632-1675)

19世紀後半になって存在が知られるようになった画家です。代表作『ミルクを注ぐ女』『アトリエの画家』など多数。

彼の絵画はカラヴァッジョやレンブラントのように明暗によって劇的に演出することはなく、自然な光によって客観的な日常の穏やかな情景を写実的に浮かび上がらせます。

日常の一場面を切り取ったような客観的な写実絵画を描くために、カメラ・オブスキュラ(写真機の原型)とよばれる暗箱を利用したと考えられています。

フェルメール『ミルクを注ぐ女』
フェルメール『ミルクを注ぐ女』1658-1660年
[キャンバスに油彩,45.5 cm×41 cm,アムステルダム国立美術館]

スペイン・バロックの画家の特徴

ディエゴ・ベラスケス(1599-1660)

17世紀の「スペイン絵画の黄金時代」を代表する画家で宮廷につかえました。代表作『道化パブロ・デ・バリャドリード』『フェリペ4世の肖像』『マルガリータ王女』『インノケンティウス10世』『ラス・メニーナス』など多数。

初期の絵画ではカラヴァジェスキの影響がみられますが、イタリア留学によりティッツァーノなどのルネサンス絵画を研究すると様式と技法が洗練され、おおまかな筆触で視覚的印象を的確にとらえる描法へ変化し、色彩は明るく暖かくなります。

筆触にみられる分割描法はのちの印象派の先駆的な手法として捉えることができ、19世紀の印象派の画家はベラスケスのことを[画家の中の画家]と称賛しています。

ベラスケス『インノケンティウス10世』
ベラスケス『インノケンティウス10世』1650年
[キャンバスに油彩,140 cm×120 cm,ドーリアパンフィーリギャラリー(ローマ)]

フランス・バロックの画家の特徴

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)

17世紀フランスの古典主義的な画家です。代表作『悔悛のマグダラのマリア』『大工の聖ヨセフ』など多数。

フランスのバロック絵画は、カラヴァッジョの絵画様式の影響を受けますが、カラヴァッジョのような劇的な明暗表現や構成ではなく、深い静けさを感じさせるような静謐な画面が特色です。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵画においてはカラヴァッジョの明暗法の影響を受けながら、ロウソクによる人工光が画面の中に設置されることで、深い静けさを感じさせます。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『大工の聖ヨセフ』
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『大工の聖ヨセフ』1642年または1645年
[キャンバスに油彩,130 cm(53.9インチ)×100 cm(40.1インチ),ルーヴル美術館]

バロックの特徴的な絵画技法

バロック絵画はルネサンス絵画の古典主義を継承しながら、より自然主義的な絵画へ展開しました。

宗教画や神話画、歴史画などにとどまらず、風俗画、静物画、風景画などのジャンルが確立するのもこの時代です。

このような傾向の中で絵画は理想を追うよりも自然で現実的な日常にある情景や人物像がリアルに描かれるようになりました。

バロック時代で最も影響力のあった画家がカラヴァッジョで、彼の明暗による劇的な絵画構成は西欧絵画に多大な影響を与えています。

さらにバロック絵画における特徴的な技法として、リアリズム絵画における画肌、マチエールに大きな変革を見ることができます。これは古典主義にはない表現主義的な傾向です。

その点にかんして特に注目するべき画家は、ルーベンス、レンブラント、ベラスケスです。

ルーベンスは単なる明暗法による立体感だけでない華麗な色彩を感じさせる軟らかい筆致の描写を確立し、特有の絵画画面を実現しました。

レンブラントは絵の具の立体的なマチエールにより生まれる質感により、絵画をより現実的対象へ近づけていきました。

ベラスケスは後の印象主義によって開発される筆触分割のような筆致によって、絵画のボリュームと色彩の輝きや空気感を画面にもたらしました。

このようなマチエールの試行錯誤によって、単に絵の具を混ぜることなく並置させることで感じられる色彩とその輝きや、絵の具の物質感によって感じられる質感の変化などが研究され、新しい絵画技法が生み出されていきます。

バロックの絵画様式のその後

18世紀になると文化や政治の中心地がイタリアからフランスへ移行し、ルイ14世の死後、絵画は貴族趣味の強い様式へ変化していきます。

芸術家のパトロンでもあった貴族に依存した絵画は、貴族趣味が強い享楽的な様式へ変化していきます。

このような様式はロココ様式と呼ばれ、他のヨーロッパの国々へも影響していきます。

参考サイト

参考文献

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