構図にある曲線の分析
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構図にある曲線の特徴[YouTube動画]
絵画にある構図の曲線を分析して、曲線の役割、心理作用を考えてみましょう。
構図における曲線の特徴
構図の曲線を分析して、絵画における曲線の役割、心理作用を3枚の絵画から考えてみましょう。
ルノワール『婚約者たち』の曲線の特徴
上図の絵画の女性を表現する曲線(赤色の線)は丸みを帯びていて、女性に柔和な印象を与え画面を穏やかにします。
左側の男性は女性と比較すれば、直線的(緑色の線)な表現で硬い表情が感じられます。
人体の骨格や筋肉の表現では、直線は硬く男性的で曲線は軟らかく女性的であることが理解できます。
ゴッホ『星月夜』の曲線の特徴
上図のゴッホの絵は、夜空に現れた星と月を表現する渦のような曲線(赤色の線)が見る人をひきつけます。
渦のような曲線は、ゴッホ自身の内面にある感情を表現しています。曲線は直線よりも流動的に変化するので、力強く複雑な感情を表現することができます。
この絵画の曲線の配置は街並みの水平線(緑色の線)や糸杉の直線(青色の線)と組み合わせることでバランスが保たれています。
ルーベンス『アンギアーリの戦い』の曲線の特徴
この絵からは物理的な力強い動きを馬の表現から感じることができます。
馬の筋肉と骨格にみられる力強い丸みは曲線と直線が複合的に絡み合い、陰影によるボリュームによって表現されます。
構図は水平線と垂直線ではなく、主に斜線と曲線の配置によって安定感とバランスが保たれています。
斜線と曲線の比較
この絵にある剣の斜線と馬の曲線を比較してみてほしいと思います。
剣を表現する斜線は直線的な動きで無機的に感じられます。一方、馬を表現する曲線は流動的で有機的に感じられます。
有機的と無機的
絵画を発表すると”有機的でよい”とか”無機的でつまらない”とか絵を批評されることがあります。そこで有機的と無機的の違いを覚えておきましょう。
- 有機的…有機体のように、多くの部分から成り立ちながらも、各部分の間に密接な関連や統一があり、全体としてうまくまとまっているさま。
- 無機的…無機物のように、生命力や情感を感じさせないさま。 [出典 精選版 日本国語大辞典]
構図にある曲線の特徴まとめ
- 曲線の丸みが画面を穏やかにする。
- 直線は硬さを演出するが曲線は軟らかさを演出する。
- 曲線は直線よりも激しい感情や流動的な動きを表現できる。
- 直線と比較して曲線の方が有機的である。
参考画像
- ピエール=オーギュスト・ルノワール『婚約者たち (シスレー夫妻)(フランス語版)』1868年,油彩,キャンバス,105×75cm,ヴァルラフ・リヒャルツ美術館
- フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』1889年6月,サン=レミ,油彩,キャンバス,73.7×92.1cm,ニューヨーク近代美術館
- ピーテル・パウル・ルーベンス『アンギアーリの戦い』(レオナルド・ダ・ヴィンチ画)の模写,1603年頃,45.3×63.6cm,ルーブル美術館
2021年3月11日執筆公開