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構図にある対角線の分析

構図にある対角線の特徴[YouTube動画]

絵画にある構図の対角線を分析して、対角線の役割、心理作用を考えてみましょう。

対角線の構図の特徴

絵画にみられる角から角へ向かう対角線の構図の特徴、心理作用を5枚の絵画から理解しましょう。

対角線の構図は、最も長い線を引くことができるので、対象を大きく入れることができます。

また対角線は、左下から右上、あるいは右下から左上へ、左右と上下へ大きな動きを与えることができるのでダイナミックな構図を生み出すことができます。

それらの点を考慮しながら具体的に絵画を見ながら考察してみましょう。

葛飾北斎『遠江山中(とおとうみさんちゅう)』の対角線の構図

葛飾北斎『遠江山中』1506年頃
葛飾北斎『遠江山中』1830年頃

葛飾北斎『遠江山中』の対角線の構図
葛飾北斎『遠江山中』の対角線の構図

この絵画は葛飾北斎の富岳三十六景の一枚です。

画面の右下の角から左上の角へ向かって、大木が描かれることで、構図に大きな動きを与えています。

そして直線で描かれた大木は、雲や煙のような表現と対比されてコントラストを強くします。

ダイナミックな直線で描かれた大木と、曲線で流動的に描かれた雲や煙、地面がバランスをとり、安定感のある構図として見ることができます。

葛飾北斎『常州牛堀(じょうしゅううしぼり)』の対角線の構図

葛飾北斎『常州牛堀』1830年頃
葛飾北斎『常州牛堀』1830年頃

葛飾北斎『常州牛堀』の対角線の構図
葛飾北斎『常州牛堀』の対角線の構図

この絵画も葛飾北斎の富岳三十六景の一枚です。

先ほどと同じようにこの絵画は、右下の角から左上の角へ向かう対角線上に、対象が描かれています。

この絵画の場合、船が斜めに大きく描かれることで、画面全体に強い動きとインパクトが生じています。

そして、船が境界となる前景の岩山と遠景の富士山は、船とは異なる視点によって描かれて、絵画が構成されています。

このように、複数の視点による絵画構成が可能になるのは、対角線上に対象が描かれることで感じられる、強い動きとインパクトにその要因があると考えられます。

ルノワール『ボートパーティーの昼食会』の対角線の構図

ルノワール『ボートパーティーの昼食会』1881年
ルノワール『ボートパーティーの昼食会』1881年

ルノワール『ボートパーティーの昼食会』の対角線の構図
ルノワール『ボートパーティーの昼食会』の対角線の構図

このルノワールの絵画のように多くの人物を描く際には、構図の配置で迷いが生じやすいと思います。

この絵画では左下角から右上角へ向かう対角線上に、人物が配置され、左右への広がりとともに奥行きを感じさせます。

構図の中に芯となる対角線を基準にすることで、人物を配置するのが容易になるように感じられます。

そして、それらを実現するために、人物の視線や同じ色の帽子をバランスよく配置して、構図に安定感を与えています。

ルーベンス『キリスト昇架』の対角線の構図

ルーベンス『キリスト昇架』1610年頃
ルーベンス『キリスト昇架』1610年頃

ルーベンス『キリスト昇架』の対角線の構図
ルーベンス『キリスト昇架』の対角線の構図

この絵画では右下角から左上角へ向かった対角線が基準になり、対象が描かれています。

対角線上には、十字架にはりつけにされたキリストが配置され、それを取り巻くように人物が配置されて行きます。

すべての人物の動きや力が十字架とキリストへはたらき、躍動感と緊張感を感じさせています。

そして、それらの人物がつくる形は大きな三角形を感じさせるので構図には安定感があります。

ドミニク・アングル『グランド・オダリスク』の対角線の構図

ドミニク・アングル『グランド・オダリスク』1814年
アングル『グランド・オダリスク』1814年

ドミニク・アングル『グランド・オダリスク』の対角線の構図
アングル『グランド・オダリスク』の対角線の構図

この絵画では対角線上に女性が配置されて描かれています。

対角線上に描かれる人物は最も画面上で大きく描くことができます。

そして、対角線上に描かれている女性は緑色の線のような曲線を感じさせているので、対角線の直線を意識させながら、人物の曲線も同時に感じさせることができるので存在感は強くなります。

対角線上に配置された女性は、曲線美を強く感じさせるとともに、垂直線上や水平線上に描かれるよりも動きを感じさせることができるので、女性のヌードを描くときに、対角線の構図がよく採用されています。

対角線の構図の特徴 - まとめ

  • 対角線の構図は対象を大きく入れることができる。
  • 対角線の構図は左右上下へ大きな動きを与えることができる。
  • 対角線の構図は左右の広がりとともに空間の奥行きが表現できる。
  • 対角線の構図は躍動感と共に緊張感が表現できる。
  • 対角線の構図は対象を複数視点で表現するときに利用できる。
  • 対角線の構図は女性の人体の曲線美と動きが表現しやすい。

参考画像

  • 葛飾北斎『遠江山中(とおとうみさんちゅう)』1830年頃,木版画,大判(約26.5cm×約39cm)
  • 葛飾北斎『常州牛堀(じょうしゅううしぼり)』1830年頃,木版画,大判(約26.5cm×約39cm)
  • ルノワール『ボートパーティーの昼食会』1881年,油彩,キャンバス,130.2×175.6cm,フィリップス コレクション
  • ルーベンス『キリスト昇架』1610年頃,油彩,板,460×340cm,聖母大聖堂 (アントウェルペン)
  • ドミニク・アングル『グランド・オダリスク』1814年,油彩,キャンバス,91×162cm,ルーブル美術館

2024年3月執筆公開

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