構図にある垂直線の分析
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構図にある垂直線の特徴[YouTube動画]
絵画にある構図の垂直線を分析して、垂直線の役割、心理作用を考えてみましょう。
構図における垂直線の特徴
構図の垂直線を分析して、絵画における垂直線の役割、心理作用を5枚の絵画から考えてみましょう。
モネ『国会議事堂下のテムズ川』の垂直線の特徴
この絵画では建物、船着き場、船の煙突、並木などで垂直線が描かれています。
赤色で記した建物の垂直線は歪むことがないので動きがなく無機質で理性的な緊張感を感じることができます。
それに対して黄色の線で記した並木は少し歪みながら垂直方向へ延びていて、有機的な動きを感じることができます。
また青色の線で記した川に浮かぶ船は揺れることでマストが傾き、動きを感じることができます。
緑色の船着き場らしき建造物は若干斜めになった垂直線で描かれていて、生活感を感じさせ、背後の建物と対比的です。
このように水平線に対して直角に伸びる垂直線はあまり動きを感じることがありませんが、少しでも傾くことで動きを簡単に作ることができます。
そして、垂直線の性質によって、それぞれが群化されることを見逃すことができません。
モネ『アルジャントゥイユの橋』の垂直線の特徴
黄色の線で記した橋げたの垂直線は線遠近法によって幅を狭めて短くなることで奥行きが感じられ理性的です。
それに対して船から延びる赤色の線(右側)のマストは斜めに少し傾いていて左右に動きが生まれ、手前にある赤色の線(左側)のマストと呼応して前後の動きを感じることができます。
さらに水平方向へ延びる緑色の線の船のブームと呼応して逆三角形の構図を形成し画面に安定感を与えます。
モネ『陽を浴びるポプラ並木』の垂直線の特徴
ポプラ並木は一定間隔を保ちリズム感を感じさせながら遠ざかっていきます。このように垂直線を並列するとリズム感が生まれ前後左右に動きをつくります。
この絵画は平面的ですが、赤色の線で描かれる木の太さ長さ間隔が、緑の線で描かれる並木の太さ長さ間隔と呼応して、リズム感のある奥行きを感じられます。
モロー『オルフェウス』の垂直線の特徴
水平線が死を感じさせるのと対比して、赤線で記した垂直線は人物の意志や生命力を感じさせることができます。
水平と垂直は対立的ですが、テーマに合わせて組み合わせることで絵画に強い構造を作ることができます。
ゴッホ『糸杉と星の見える道』の垂直線の特徴
ゴッホの渦を巻いたような絵画画面は水平方向の線が安定感を与えています。そして、赤色の線で記した糸杉が垂直方向へ直立することで大きな十字型の構図が生まれ、渦を巻いた曲線の動きを制御しています。
さらに大きな糸杉のバランスを支えるように緑色の線で記した糸杉や青色の線で記した人物が描かれます。
構図にある垂直線の特徴まとめ
- 垂直線は緊張感があり水平線に対峙する働きがある。
- 垂直線を傾かせると緊張感が崩れ動きが生まれる。
- 垂直線を並列するとリズミカルな動きが生まれ群化される。
- 垂直線上に直立する人物は強い意志を感じさせたり、生命力を感じさせる。
- 垂直線を傾かせたり曲線状に歪めると多要素と一体化しやすい。
- 垂直線は水平線と組み合わせて使用される。
参考画像
- クロード・モネ『国会議事堂下のテムズ川』1871年,油彩,キャンバス,47×73cm,ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
- クロード・モネ『アルジャントゥイユの橋』1874年,油彩,キャンバス,60×79.7cm,ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)
- クロード・モネ『陽を浴びるポプラ並木』1891年,油彩,キャンバス,93×73.5cm,国立西洋美術館
- ギュスターヴ・モロー『オルフェウス(オルフェウスの首を抱くトラキアの娘)』1865年,油彩,パネル,154×99.5cm,オルセー美術館
- ファン・ゴッホ『糸杉と星の見える道』1890年5月サン=レミ,油彩,キャンバス,92×73cm,クレラー・ミュラー美術館
2021年3月9日執筆公開